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異邦人の庭 〜secret garden〜
第14章 ミスオブ沙棗の涙 〜コーネリアの娘の呟き〜
「…そ、そ、それは…本当に政彦兄さんの子どもなんですか⁈」
驚きのあまり、不穏な発言をした千晴に政彦がむっと眉を顰めた。
「当たり前だ。僕の子どもに決まっているだろう⁈
…千晴、まさか君の子どもだとでも言いたいのか?」
千晴が慌てて首を振る。
「まさか!僕は誓ってそんな不埒なことは…!
信じて、紗耶ちゃん!」
ぎゅっと手を握られ、紗耶は全方向に当惑しながら頷く。
「…え、ええ…。分かっているわ…」
…千晴お兄ちゃまは、そんなことをなさる方じゃないわ…。
でも…お母様が…おめでただなんて…。
もう子どもではないから、どうやったら妊娠するか…も分かっている。
…母は父を本当に愛しているのだろうか?と案じたことすらあった紗耶には、このニュースは青天の霹靂であった。
「…ずっと二人目が欲しかったんだが、なかなかタイミングがね…。
だからまさに天からの授かりものだよ…」
しみじみと呟く政彦の手を、紫織の白い手が優しく握り締めた。
「…貴方…」
…そうして、紗耶を見上げ、やや心配気に尋ねた。
「…四十歳のお母様が赤ちゃんを産むなんて、紗耶ちゃんは恥ずかしいかしら?」
紗耶はぶんぶんと首を振った。
「ううん!そんなことないわ!
嬉しいわ。私、弟か妹が欲しかったの」
…それに…
と、声を詰まらせながら告げた。
「…お父様とお母様が仲良しなのが、紗耶はすごくすごく嬉しい…」
「…紗耶ちゃん…」
美しい瞳に涙を浮かべる紫織を紗耶はぎゅっと抱きしめた。
…母からは穏やかなカモミールローマンの薫りが漂ってきた。
「…おめでとう、お母様。お父様」
「ありがとう、紗耶ちゃん…」
傍らの千晴が、美しい手を政彦に差し出す。
「…おめでとうございます。政彦兄さん。
心からお祝いを申し上げます」
「…ありがとう、千晴…」
皆が胸一杯になり、ただ黙って微笑み合った時、その尊大で傲慢で…けれど微かに温かな慈しみのある声は響いてきたのだ。
「…まあまあ、これは随分と劇的な場面に遭遇したこと…!
本当に人生は解らないものね。
…長生きはしてみるものだわ…」
驚きのあまり、不穏な発言をした千晴に政彦がむっと眉を顰めた。
「当たり前だ。僕の子どもに決まっているだろう⁈
…千晴、まさか君の子どもだとでも言いたいのか?」
千晴が慌てて首を振る。
「まさか!僕は誓ってそんな不埒なことは…!
信じて、紗耶ちゃん!」
ぎゅっと手を握られ、紗耶は全方向に当惑しながら頷く。
「…え、ええ…。分かっているわ…」
…千晴お兄ちゃまは、そんなことをなさる方じゃないわ…。
でも…お母様が…おめでただなんて…。
もう子どもではないから、どうやったら妊娠するか…も分かっている。
…母は父を本当に愛しているのだろうか?と案じたことすらあった紗耶には、このニュースは青天の霹靂であった。
「…ずっと二人目が欲しかったんだが、なかなかタイミングがね…。
だからまさに天からの授かりものだよ…」
しみじみと呟く政彦の手を、紫織の白い手が優しく握り締めた。
「…貴方…」
…そうして、紗耶を見上げ、やや心配気に尋ねた。
「…四十歳のお母様が赤ちゃんを産むなんて、紗耶ちゃんは恥ずかしいかしら?」
紗耶はぶんぶんと首を振った。
「ううん!そんなことないわ!
嬉しいわ。私、弟か妹が欲しかったの」
…それに…
と、声を詰まらせながら告げた。
「…お父様とお母様が仲良しなのが、紗耶はすごくすごく嬉しい…」
「…紗耶ちゃん…」
美しい瞳に涙を浮かべる紫織を紗耶はぎゅっと抱きしめた。
…母からは穏やかなカモミールローマンの薫りが漂ってきた。
「…おめでとう、お母様。お父様」
「ありがとう、紗耶ちゃん…」
傍らの千晴が、美しい手を政彦に差し出す。
「…おめでとうございます。政彦兄さん。
心からお祝いを申し上げます」
「…ありがとう、千晴…」
皆が胸一杯になり、ただ黙って微笑み合った時、その尊大で傲慢で…けれど微かに温かな慈しみのある声は響いてきたのだ。
「…まあまあ、これは随分と劇的な場面に遭遇したこと…!
本当に人生は解らないものね。
…長生きはしてみるものだわ…」