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異邦人の庭 〜secret garden〜
第14章 ミスオブ沙棗の涙 〜コーネリアの娘の呟き〜
「…紗耶ちゃん…」
はっと息を飲む気配がした。
「…私、ずっと知っていたわ…。お兄ちゃまがお母様を愛していることを…。
…お兄ちゃまがお母様にキスをしたところも…見てしまったわ…」
…あの時は、本当に衝撃的で…そしてとても悲しかった…。
暫くして、どこか痛むような哀しげな表情で千晴は口を開いた。
「…そう…。
僕は紗耶ちゃんをずっと辛い目に合わせていたんだね…」
悲痛な声が千晴から漏れた。
「…ごめんね、紗耶ちゃん」
ゆっくりと正面を向かされ、ぎゅっと抱き竦められる。
「…ごめん…紗耶ちゃん…。
許してくれ…」
「…千晴お兄ちゃま…」
「紫織さんは…僕の初恋だった…。
…若くして亡くなった母に生写しだったこともあって、紫織さんを見た瞬間に僕は彼女に魅せられてしまったんだ」
…けれど…
と、千晴は自分と対話するように続けた。
「…僕は紫織さんに、ずっと恋しい母を追い求めていたのかもしれない…。
僕には母の記憶がないからね…。
美しく優しく聡明な紫織さんに、僕の母の理想像を見ていたのかもしれない…」
寂しげなその端麗な貌に胸が締め付けられる。
「…お兄ちゃま…」
「…だから最初は、君を花嫁に望んだのは紫織さんの娘だから…という理由もあった」
紗耶はびくりと身体を震わせる。
その肩を千晴は強く引き寄せる。
「でもね、紗耶ちゃん。
僕は君がこの屋敷に来て、僕の婚約者として一緒に暮らすうちに、いつしか紫織さんの面影を紗耶ちゃんに重ねることはしなくなっていた。
紗耶ちゃんは紫織さんではなかった。
紗耶ちゃんは紗耶ちゃんだった。
紗耶ちゃんの素直さ、無垢さ、愛らしさ…。
それらに僕はどんどん惹かれていった。
今では君に夢中だよ。
…気がついたら、紗耶ちゃんしか見ていなかった。
そのままの紗耶ちゃんを、僕は愛するようになったんだ」
はっと息を飲む気配がした。
「…私、ずっと知っていたわ…。お兄ちゃまがお母様を愛していることを…。
…お兄ちゃまがお母様にキスをしたところも…見てしまったわ…」
…あの時は、本当に衝撃的で…そしてとても悲しかった…。
暫くして、どこか痛むような哀しげな表情で千晴は口を開いた。
「…そう…。
僕は紗耶ちゃんをずっと辛い目に合わせていたんだね…」
悲痛な声が千晴から漏れた。
「…ごめんね、紗耶ちゃん」
ゆっくりと正面を向かされ、ぎゅっと抱き竦められる。
「…ごめん…紗耶ちゃん…。
許してくれ…」
「…千晴お兄ちゃま…」
「紫織さんは…僕の初恋だった…。
…若くして亡くなった母に生写しだったこともあって、紫織さんを見た瞬間に僕は彼女に魅せられてしまったんだ」
…けれど…
と、千晴は自分と対話するように続けた。
「…僕は紫織さんに、ずっと恋しい母を追い求めていたのかもしれない…。
僕には母の記憶がないからね…。
美しく優しく聡明な紫織さんに、僕の母の理想像を見ていたのかもしれない…」
寂しげなその端麗な貌に胸が締め付けられる。
「…お兄ちゃま…」
「…だから最初は、君を花嫁に望んだのは紫織さんの娘だから…という理由もあった」
紗耶はびくりと身体を震わせる。
その肩を千晴は強く引き寄せる。
「でもね、紗耶ちゃん。
僕は君がこの屋敷に来て、僕の婚約者として一緒に暮らすうちに、いつしか紫織さんの面影を紗耶ちゃんに重ねることはしなくなっていた。
紗耶ちゃんは紫織さんではなかった。
紗耶ちゃんは紗耶ちゃんだった。
紗耶ちゃんの素直さ、無垢さ、愛らしさ…。
それらに僕はどんどん惹かれていった。
今では君に夢中だよ。
…気がついたら、紗耶ちゃんしか見ていなかった。
そのままの紗耶ちゃんを、僕は愛するようになったんだ」