この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
「…ねえ、お母様…。
今日はご本家で一体何があるの?
どうしてお着物まで着て伺うの?」
鏡台の前で、紗耶に薄化粧を施してくれる紫織に、紗耶はそっと尋ねた。
紫織は紗耶の薄紅色の可憐な唇に京紅を塗る白い手を一瞬止め…すぐになめらかに塗りながら
「紗耶ちゃんは何も心配しなくて良いのよ。
親族の皆様がお集まりになって、大お祖母様と千晴さんがお話しなさるだけ…。
お着物は、大お祖母様のご希望のようね。
私のお嫁入り衣装が陽の目を見て良かったわ」
朗らかに笑う紫織に、紗耶はなんとなく釈然としないまま、小さく微笑んだ。
「…さあ、紗耶ちゃん。オリジナルのアロマよ。
ローズオットーと少しネロリをブレンドしたの。
…落ち着いて、リラックスできるようにね」
そう言って、紫織はアロマを染み込ませた懐紙を紗耶の襟元の袷せにそっと忍ばせた。
「良い薫り…。ありがとう、お母様」
大好きな薔薇のアロマに包まれて、紗耶の気分はふんわりと明るくなった。
「支度はできたかな?紗耶」
やがて、ブラックフォーマルの装いの政彦が入ってきた。
背が高く品格のある政彦に、それは良く馴染んでいた。
子煩悩な彼はすぐに紗耶の振袖姿に眼を見張り、相好を崩した。
「…紗耶…。とても綺麗だよ。
まるでお人形みたいだ」
「ありがとう、お父様」
照れて笑い返す紗耶の頰を軽く摘み、優しく
「…あんまり綺麗でも、心配になるんだがな…今日は…」
…と、不思議な呟きを漏らしていたが、
「さあ、そろそろ行こう。
大お祖母様は遅刻が何よりお嫌いだからな」
如何にも銀行家らしいきびきびとした口調と動作で二人を誘ったのだった。
今日はご本家で一体何があるの?
どうしてお着物まで着て伺うの?」
鏡台の前で、紗耶に薄化粧を施してくれる紫織に、紗耶はそっと尋ねた。
紫織は紗耶の薄紅色の可憐な唇に京紅を塗る白い手を一瞬止め…すぐになめらかに塗りながら
「紗耶ちゃんは何も心配しなくて良いのよ。
親族の皆様がお集まりになって、大お祖母様と千晴さんがお話しなさるだけ…。
お着物は、大お祖母様のご希望のようね。
私のお嫁入り衣装が陽の目を見て良かったわ」
朗らかに笑う紫織に、紗耶はなんとなく釈然としないまま、小さく微笑んだ。
「…さあ、紗耶ちゃん。オリジナルのアロマよ。
ローズオットーと少しネロリをブレンドしたの。
…落ち着いて、リラックスできるようにね」
そう言って、紫織はアロマを染み込ませた懐紙を紗耶の襟元の袷せにそっと忍ばせた。
「良い薫り…。ありがとう、お母様」
大好きな薔薇のアロマに包まれて、紗耶の気分はふんわりと明るくなった。
「支度はできたかな?紗耶」
やがて、ブラックフォーマルの装いの政彦が入ってきた。
背が高く品格のある政彦に、それは良く馴染んでいた。
子煩悩な彼はすぐに紗耶の振袖姿に眼を見張り、相好を崩した。
「…紗耶…。とても綺麗だよ。
まるでお人形みたいだ」
「ありがとう、お父様」
照れて笑い返す紗耶の頰を軽く摘み、優しく
「…あんまり綺麗でも、心配になるんだがな…今日は…」
…と、不思議な呟きを漏らしていたが、
「さあ、そろそろ行こう。
大お祖母様は遅刻が何よりお嫌いだからな」
如何にも銀行家らしいきびきびとした口調と動作で二人を誘ったのだった。