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第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

紗耶は呆気に取られる。
…女子学生のやや厚かましいまでの積極さもだが、藤木の如何にも人たらしめいた気安げな様子にだ。
…藤木先生って、こんな…軽い先生なの…？
千晴も清瀧もこんなふうに軽口を聞くタイプではない。
政彦の父で紗耶の祖父も大学の名誉教授だが、大変実直で控えめな紳士だ。
大学の教授は皆紳士的だと思っていた紗耶は戸惑う。

「先生、LINE交換しない？」
「ごめんね。
教員と学生は個人的なやりとりは禁じられているんだよ」
「ああ〜ん。残念！
先生、秋からこっちでも教えるんでしょ？
講義、聴きに行っちゃう！」
「それはありがとう。良かったら友だちにも宣伝しといて。
理系の講義は文系の学生には敬遠されがちだからね」
「リョーカイ！
じゃ、レポートよろしくね！
清瀧先生にもおめでとうって伝えといて！」
…女子学生は鼻歌混じりに研究室を出て行った。