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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…紗耶さん?お帰りなさい」
柔らかな微笑みで名前を呼ばれ、紗耶は少し無愛想な表情で報告する。
「…教務課、行ってきました」
「ありがとう、紗耶さん。助かったよ…」
…あれ?と、貌を覗き込まれる。
「どうしたの?何かあったかな?」
「…いいえ…」
つい、仏頂面になってしまう。
…こんなことで、何で私が不機嫌になるのかしら…と、自分でも戸惑う。
「そう?なら良かった…」
…と、藤木が微笑みながら踵を返した瞬間、ふわりと良い薫りに包まれた。
紗耶はどきりとする。
…香水…かな?
…百合と…モッシーと…微かにカーネーション…?
すごく、良い薫り…。
紗耶はアロマテラピストの母のラボで小さな頃から門前の小僧よろしく薫りに親しんできた。
だから香水の成分はある程度判別できるのだ。
「…あのう…。
先生、良い薫りがしますね…。
何の香水ですか?」
思わずやや不機嫌になったことも忘れて尋ねてしまった。
藤木が少し驚いたように、眼を瞬かせた。
「…ああ…。ありがとう…。
これは自分で調合した薫りなんだ。
僕は昔から香料の研究をしていてね…。
これは僕がまだ若い頃、コロンビア大学の研究室で作ったオリジナルの香水なんだ…。
なんだかとても気に入ってずっと使っている…」
「そうなんですか…。
ご自分で作られたなんてすごいですね…!
とても良い薫りです。
…どことなく神秘的で…それからなんとなく切なくて…。
先生にお似合いです」
紗耶が正直な感想を漏らすと、藤木が微かに痛みを感じるような表情を滲ませ…けれどすぐにそれは穏やかな微笑みに替えられた。
「…ありがとう…。
君は薫りのセンスがあるね…」
そうして、独り言のようにこう呟いたのだ…。
「…そんなところも、よく似ている…」
柔らかな微笑みで名前を呼ばれ、紗耶は少し無愛想な表情で報告する。
「…教務課、行ってきました」
「ありがとう、紗耶さん。助かったよ…」
…あれ?と、貌を覗き込まれる。
「どうしたの?何かあったかな?」
「…いいえ…」
つい、仏頂面になってしまう。
…こんなことで、何で私が不機嫌になるのかしら…と、自分でも戸惑う。
「そう?なら良かった…」
…と、藤木が微笑みながら踵を返した瞬間、ふわりと良い薫りに包まれた。
紗耶はどきりとする。
…香水…かな?
…百合と…モッシーと…微かにカーネーション…?
すごく、良い薫り…。
紗耶はアロマテラピストの母のラボで小さな頃から門前の小僧よろしく薫りに親しんできた。
だから香水の成分はある程度判別できるのだ。
「…あのう…。
先生、良い薫りがしますね…。
何の香水ですか?」
思わずやや不機嫌になったことも忘れて尋ねてしまった。
藤木が少し驚いたように、眼を瞬かせた。
「…ああ…。ありがとう…。
これは自分で調合した薫りなんだ。
僕は昔から香料の研究をしていてね…。
これは僕がまだ若い頃、コロンビア大学の研究室で作ったオリジナルの香水なんだ…。
なんだかとても気に入ってずっと使っている…」
「そうなんですか…。
ご自分で作られたなんてすごいですね…!
とても良い薫りです。
…どことなく神秘的で…それからなんとなく切なくて…。
先生にお似合いです」
紗耶が正直な感想を漏らすと、藤木が微かに痛みを感じるような表情を滲ませ…けれどすぐにそれは穏やかな微笑みに替えられた。
「…ありがとう…。
君は薫りのセンスがあるね…」
そうして、独り言のようにこう呟いたのだ…。
「…そんなところも、よく似ている…」