この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…それから紗耶は、最終授業の終了時間まで清瀧の研究室で藤木の手伝いをした。
研究室の電話が思いのほか頻繁に掛かってきたのだ。
清瀧は大学での教え以外に執筆活動など対外的な仕事を多くしているかららしい。
そして、レポート提出に来た学生たちはなぜだか初見の大学教授の藤木にやたら話しかけ、人生相談紛いのものまで持ちかけるので、藤木一人だと忙しそうだったからだ。
…藤木先生って、なんだか不思議なひと…。
特に派手でも人懐っこい訳でもないのに、なぜか話しかけたくなるようなものをお持ちみたいだわ…。
紗耶は不思議に思いつつも、それを否定できない何かを藤木から微かに感じ取っていた。
その合間に、研究室の中を清瀧が困らない程度に片付ける。
窓辺の観葉植物に水をやったり、さっと拭き掃除をしたりするのは苦ではなかった。
デスクの前には清瀧と美しい女性…妻の澄佳の写真が飾られていた。
澄佳のその透明感溢れる清楚な美しさは、写真だけでも充分に伝わってきた。
…すごく綺麗な方…。
この方がもうすぐお母様になるのね…。
会ったことがないのに、まるで親しい親戚が出産を迎えるような喜びに包まれる。
…無事に赤ちゃんが産まれますように…。
紗耶は写真に向かってそっと呟いた。
…「紗耶さんがいてくれて、本当に助かったよ。
ありがとう。
君は電話の受け答えがとても丁寧で上品だし、片付けも上手だね。
見ていて気持ちがいい」
褒められて、少しどきどきする。
「…いいえ…。そんな…。
お母様…母が日頃していることを真似しているだけです…。
母はもっと何でも器用に出来るし、ずっと洗練されているんですけど…」
藤木の榛色の瞳が微かに揺れ…ふっと優しい色を帯びた。
「…良いお母様に育てられたんだね…。
紗耶さんは幸せな女の子だ…」
…それは、どこか懐かしむような不思議な声だった…。
研究室の電話が思いのほか頻繁に掛かってきたのだ。
清瀧は大学での教え以外に執筆活動など対外的な仕事を多くしているかららしい。
そして、レポート提出に来た学生たちはなぜだか初見の大学教授の藤木にやたら話しかけ、人生相談紛いのものまで持ちかけるので、藤木一人だと忙しそうだったからだ。
…藤木先生って、なんだか不思議なひと…。
特に派手でも人懐っこい訳でもないのに、なぜか話しかけたくなるようなものをお持ちみたいだわ…。
紗耶は不思議に思いつつも、それを否定できない何かを藤木から微かに感じ取っていた。
その合間に、研究室の中を清瀧が困らない程度に片付ける。
窓辺の観葉植物に水をやったり、さっと拭き掃除をしたりするのは苦ではなかった。
デスクの前には清瀧と美しい女性…妻の澄佳の写真が飾られていた。
澄佳のその透明感溢れる清楚な美しさは、写真だけでも充分に伝わってきた。
…すごく綺麗な方…。
この方がもうすぐお母様になるのね…。
会ったことがないのに、まるで親しい親戚が出産を迎えるような喜びに包まれる。
…無事に赤ちゃんが産まれますように…。
紗耶は写真に向かってそっと呟いた。
…「紗耶さんがいてくれて、本当に助かったよ。
ありがとう。
君は電話の受け答えがとても丁寧で上品だし、片付けも上手だね。
見ていて気持ちがいい」
褒められて、少しどきどきする。
「…いいえ…。そんな…。
お母様…母が日頃していることを真似しているだけです…。
母はもっと何でも器用に出来るし、ずっと洗練されているんですけど…」
藤木の榛色の瞳が微かに揺れ…ふっと優しい色を帯びた。
「…良いお母様に育てられたんだね…。
紗耶さんは幸せな女の子だ…」
…それは、どこか懐かしむような不思議な声だった…。