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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…へえ…。面白い店を知っているんだね…」
狭い店内を藤木が興味深げに見回す。
「…大丈夫ですか?もっと…おしゃれなフレンチレストランとかが良かったですか?」
紗耶は小声で尋ねる。
「いや、こういう店の方が落ち着く。
…学生時代を思い出すなあ…。
昔よく、こんな店で友だちと食事したり飲んだりしたよ」
藤木が懐かしげに表情を崩した。
そうすると、美しい榛色の瞳は、温かな色を湛えるのだ…。
…本当に綺麗な瞳…。
紗耶はそっと藤木を盗み見る。
…紗耶が藤木を誘ったのは大学初日に隼人に連れてこられた定食屋、はまなす亭だ。
はまなす亭はサークル、ペニー・レーンの行きつけの店だった。
あれから紗耶は数えきれないくらいにこの店を訪れている。
人見知りの紗耶が物おじせずに案内できるのは、この店よりほかに思いつかなかったのもあるが…
「ホルモン定食が絶品なんです…!
藤木先生にぜひ食べていただきたくて!」
「…へ、へえ…」
紗耶は藤木が一瞬引くほど力説した。
…そう。紗耶はすっかりこの店のホルモン定食にハマってしまったのだ。
「…へえ…。ホルモン…。
紗耶さんが…。なんだか意外だなあ…」
藤木が眼を丸くしていると、賑やかな声が近づいてきた。
「そうそう、そうなのよ。紗耶ちゃんみたいなお嬢様がねえ…て、あたしもびっくりなのよ。
この店もすごく気に入ってくれてねえ。よく通ってくれるのよ。
お嬢様なのに気働きしてさ、忙しいとお皿運んだり…皿洗いまでしてくれるのよ。ほんっとに良い子なの。
こんな可愛いお嬢ちゃん、うちの店になんか、まさに掃き溜めに鶴…なんだけどねえ」
店の女将がにこにこしながら、お茶を運んできた。
すると女将は藤木を見て大仰に首を振った。
「あらやだ!イイ男じゃないの!
紗耶ちゃん、隼人がヤキモチ焼くわよお〜!」
紗耶は慌てて否定する。
「そんなんじゃないんです。
こちらは大学の先生なんです」
「へえ…!大学の先生…。
なんか役者みたいなイイ男ねえ…。
…ほら、あのヒト、『麒麟がくる』の長谷川ナントカによく似てるわあ…」
女将はうっとりため息を吐いた。
そうして藤木に秋波を送り、やがて…
「もう!今日はこの男前と紗耶ちゃんに出血大サービスしちゃう!
ホルモン定食に焼き鳥と春菊の白和え、出汁巻き玉子も付けちゃうわっ!」
と、声高らかに宣言したのだ。
狭い店内を藤木が興味深げに見回す。
「…大丈夫ですか?もっと…おしゃれなフレンチレストランとかが良かったですか?」
紗耶は小声で尋ねる。
「いや、こういう店の方が落ち着く。
…学生時代を思い出すなあ…。
昔よく、こんな店で友だちと食事したり飲んだりしたよ」
藤木が懐かしげに表情を崩した。
そうすると、美しい榛色の瞳は、温かな色を湛えるのだ…。
…本当に綺麗な瞳…。
紗耶はそっと藤木を盗み見る。
…紗耶が藤木を誘ったのは大学初日に隼人に連れてこられた定食屋、はまなす亭だ。
はまなす亭はサークル、ペニー・レーンの行きつけの店だった。
あれから紗耶は数えきれないくらいにこの店を訪れている。
人見知りの紗耶が物おじせずに案内できるのは、この店よりほかに思いつかなかったのもあるが…
「ホルモン定食が絶品なんです…!
藤木先生にぜひ食べていただきたくて!」
「…へ、へえ…」
紗耶は藤木が一瞬引くほど力説した。
…そう。紗耶はすっかりこの店のホルモン定食にハマってしまったのだ。
「…へえ…。ホルモン…。
紗耶さんが…。なんだか意外だなあ…」
藤木が眼を丸くしていると、賑やかな声が近づいてきた。
「そうそう、そうなのよ。紗耶ちゃんみたいなお嬢様がねえ…て、あたしもびっくりなのよ。
この店もすごく気に入ってくれてねえ。よく通ってくれるのよ。
お嬢様なのに気働きしてさ、忙しいとお皿運んだり…皿洗いまでしてくれるのよ。ほんっとに良い子なの。
こんな可愛いお嬢ちゃん、うちの店になんか、まさに掃き溜めに鶴…なんだけどねえ」
店の女将がにこにこしながら、お茶を運んできた。
すると女将は藤木を見て大仰に首を振った。
「あらやだ!イイ男じゃないの!
紗耶ちゃん、隼人がヤキモチ焼くわよお〜!」
紗耶は慌てて否定する。
「そんなんじゃないんです。
こちらは大学の先生なんです」
「へえ…!大学の先生…。
なんか役者みたいなイイ男ねえ…。
…ほら、あのヒト、『麒麟がくる』の長谷川ナントカによく似てるわあ…」
女将はうっとりため息を吐いた。
そうして藤木に秋波を送り、やがて…
「もう!今日はこの男前と紗耶ちゃんに出血大サービスしちゃう!
ホルモン定食に焼き鳥と春菊の白和え、出汁巻き玉子も付けちゃうわっ!」
と、声高らかに宣言したのだ。