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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
それから和やかに食事は進んだ。
藤木は教授という堅苦しさを感じさせない自然体の穏やかさと優しさに満ちていて…それはとても紗耶を安心させたのだ。
彼は話上手で聞き上手でもあった。
知識をひけらかすこともなく、けれどさりげなく紗耶が興味を持つような薫りの話しや、コロンビア大学やニューヨークの話をしてくれた。
…初めて会った年上の大学の先生とこんなに自然に楽しく話せるなんて…なんだか不思議…。
紗耶は眼の前の藤木をそっと見て思う。
…なぜかしら…。
なぜか、初めて会った気がしないような…。
…そんなはず、ないのに…。
…その時、藤木のスマートフォンがメールの着信音を奏でた。
「…失礼…」
そう断って藤木はスマートフォンを開いた。
メールを読み進めていた藤木の表情が、不意に柔らかく崩れた。
「生まれたよ。柊司くんの赤ちゃん。
…元気な男の子で、母子ともに健康だそうだ。
紗耶さんによろしく伝えてくれと書いてある」
「良かった!良かったわ!」
紗耶は思わず眼の前の藤木の手を握りしめた。
温かな大きな美しい手が、びくりと不意をつかれたように強張った。
紗耶は直ぐに我に帰り、慌てて手を離した。
「す、すみません…!嬉しくて…つい…」
藤木が優しく首を振った。
「いいや。僕もとても嬉しいよ。
無事に生まれて本当に良かったよね」
「はい…!男の子ですか…。
…清瀧先生も澄佳さんもお綺麗だから、きっと可愛い赤ちゃんでしょうね…」
「そうだね。二人の幸せな貌も目に浮かぶようだよ…。
やっぱり新しい命の誕生は素晴らしいね」
藤木が紗耶と眼を見合わせ、にっこりと笑った。
胸の中が、ホットミルクを飲んだあとのようにじんわりと温まる。
…綺麗な…榛色…。
琥珀色みたいな…オリーブグリーンみたいな…綺麗な色…。
お兄ちゃまの眼の色ともまた違う…不思議な…不思議な…
紗耶はうっとりと見入る。
…こんな綺麗な瞳…初めて見たわ…。
思わず、尋ねる。
「…先生の瞳、とても綺麗な色ですね…。
榛色…ていうのかしら…?」
その瞳が、驚いたように見開かれた。
藤木は教授という堅苦しさを感じさせない自然体の穏やかさと優しさに満ちていて…それはとても紗耶を安心させたのだ。
彼は話上手で聞き上手でもあった。
知識をひけらかすこともなく、けれどさりげなく紗耶が興味を持つような薫りの話しや、コロンビア大学やニューヨークの話をしてくれた。
…初めて会った年上の大学の先生とこんなに自然に楽しく話せるなんて…なんだか不思議…。
紗耶は眼の前の藤木をそっと見て思う。
…なぜかしら…。
なぜか、初めて会った気がしないような…。
…そんなはず、ないのに…。
…その時、藤木のスマートフォンがメールの着信音を奏でた。
「…失礼…」
そう断って藤木はスマートフォンを開いた。
メールを読み進めていた藤木の表情が、不意に柔らかく崩れた。
「生まれたよ。柊司くんの赤ちゃん。
…元気な男の子で、母子ともに健康だそうだ。
紗耶さんによろしく伝えてくれと書いてある」
「良かった!良かったわ!」
紗耶は思わず眼の前の藤木の手を握りしめた。
温かな大きな美しい手が、びくりと不意をつかれたように強張った。
紗耶は直ぐに我に帰り、慌てて手を離した。
「す、すみません…!嬉しくて…つい…」
藤木が優しく首を振った。
「いいや。僕もとても嬉しいよ。
無事に生まれて本当に良かったよね」
「はい…!男の子ですか…。
…清瀧先生も澄佳さんもお綺麗だから、きっと可愛い赤ちゃんでしょうね…」
「そうだね。二人の幸せな貌も目に浮かぶようだよ…。
やっぱり新しい命の誕生は素晴らしいね」
藤木が紗耶と眼を見合わせ、にっこりと笑った。
胸の中が、ホットミルクを飲んだあとのようにじんわりと温まる。
…綺麗な…榛色…。
琥珀色みたいな…オリーブグリーンみたいな…綺麗な色…。
お兄ちゃまの眼の色ともまた違う…不思議な…不思議な…
紗耶はうっとりと見入る。
…こんな綺麗な瞳…初めて見たわ…。
思わず、尋ねる。
「…先生の瞳、とても綺麗な色ですね…。
榛色…ていうのかしら…?」
その瞳が、驚いたように見開かれた。