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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「はい。…お兄ちゃま…千晴さんの瞳は陽が透けると琥珀色になって…先生の瞳に少し似ているんです。
それで…なんだか懐かしいような不思議な気持ちになったんです」

…大好きなお兄ちゃま…。
彫像のように綺麗なお兄ちゃまはその瞳もどことなくエキゾチックで…宝石のように美しく…幼い紗耶は本物の王子様だと信じていたのだ。

「…そう…。
…千晴さんも外国人の血が流れているの?」
「…いいえ。…違うと思います。
…けれど、とても綺麗な瞳なんです」

…紗耶は徳子の言葉を思い出す。

『…生まれた赤ちゃんの瞳は、あのひとの瞳に似ていたわ…。
それはまるで…神様がそっとくれた恋の形見のような気がしたのよ…』
…と。

徳子のとても不思議な…そして甘く切ない恋物語を思い返す。
…あの話は、私と大お祖母様の秘密だわ…。

「…幸せなひとだね、千晴さんは…。
名門、高遠家の美しき当主で、地位も名誉も財産も…持てるものはすべて持ち…君のような無垢で可愛らしいフィアンセに一途に愛されて…」
藤木が独り言のように呟いた。
「…え?」
意外な言葉に、紗耶は思わず眼を丸くした。

…そうして、男の次の言葉に更に驚くことになるのだ。

「…ねえ、紗耶さん。
ひとつ、提案なんだけれど…。
…僕の研究室で助手のアルバイトをしてみない?」

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