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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…わあ…!こんな建物があったんですね…!」

紗耶は古めかしい煉瓦造りの建物の前に立ち、思わず声を上げた。
…ここは通い慣れたタワービルのキャンパスから少し離れた…都心には珍しく木立が鬱蒼と生い茂る敷地の中にひっそりと佇んでいる旧校舎だった。

「古くて驚いた?
僕はあんまり現代的な建物が苦手でね。
部屋にいると息が詰まりそうになるんだ。
教務課からはタワービルの新館を勧められたんだけど、僕は理系の講師だし、そんなに学生も訪れないだろうからね。
敢えて旧校舎で…てこちらにしたんだ」

振り返る藤木の瞳は、明るい陽の光に照らされ、榛色が一層輝いていた。

…やっぱり綺麗な色…。
紗耶は密かに感心する。

「…私も、古い建物が好きです。
古い図書館や美術館のひんやりした湿度や匂いが大好きで…。
…あの、だから、こちらの校舎はとても良いな…て思います」
おずおずと答える紗耶に、藤木は優しく眼を細めた。

「…良かった…。
じゃあ、行こうか。
研究室はこの二階だ」
藤木が紗耶を促した。

…重厚な扉が軋む音を立ててゆっくりと開く。

…なんだか、わくわくするわ…。
紗耶は探検に出る子どものようにどきどきと胸を高鳴らせた。

「紗耶さんに気に入ってもらえて、本当に良かった…。
…ここは大学の創始者が昭和の初めまで実際に使用していた私邸に、戦後GHQが少し手を加え、将校や士官の研修所として使われていたらしい。
…なかなかに歴史的建造物だよ」
石畳みの階段を上りながら、藤木は説明する。

「…すごいですね…」
螺旋状の階段は思いの外段数があり、紗耶は息を弾ませながらついてゆく。

「…もっとも、君が今住んでいる高遠家なんて国宝級の建物や意匠や家具だらけなんだろうけれどね…」
好意的に微笑まれ、釣られて笑う。

「…そうですね…。
私もまだ入ったことがない建物やお部屋がたくさんあって…夜は怖いくらいです…」
…本当にそうなのだ。
特に徳子の屋敷は…幽霊が出そうなほどに広く薄暗い…。

「それはすごい!
高遠家は好事家にとっては垂涎の的だね。
現代のお伽噺のお屋敷だ」

…そうして…

男は少し悪戯めいた表情で紗耶の瞳を見ながら囁いた…。

「…さしずめ君は、お伽噺のお姫様だね。
…白雪姫やオーロラ姫にも遜色のない…ね…」


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