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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…少し休憩しようか…?」
書棚に段ボールの蔵書がほぼ収まった頃、藤木が紗耶に声をかけた。
天井近くまで張り巡らされた書棚は、まるでヨーロッパの古い図書館のようだ。
…藤木の蔵書は殆どが洋書だったので、そのせいもある。
作り付けの梯子から身軽に降りながら、藤木はにっこりと笑った。
「紗耶さんのお陰でだいぶすっきり片付いたよ。
ありがとう。
…お茶にしよう」
「はい…!
あの…私、何か買ってきましょうか?」
学生棟のコンビニに走ろうかと思い浮かべていると、藤木が隣室の扉を開け、しなやかに中に入ってゆく。
「いや、大丈夫。
今、お茶を淹れるよ。
…古いけれど小さなキッチンがあるんだ。
コーヒーや紅茶くらい淹れられる。
紅茶がいいかな?
頂き物だけれどフォートナム&メイソンのお茶がある」
「は、はい。ありがとうございます…。
あの…」
手伝おうかどうしようか迷っていると…
「適当に座っていて。
…と言ってもまだテーブルも椅子もないね。
悪いけれどラグの上にでも…」
と、貌だけ覗かせ笑った。
その笑顔に少しどきどきしながら頷いた。
「はい!大丈夫です!」
…ラグ…と言っても高価そうな鍋島段通だ。
藤木先生…ってさりげなく趣味がいい…。
密かに感心した。
紗耶はライラック色の長いフレアスカートを皺にならないようにそっと広げて座った。
「紅茶にお砂糖はいくつ?」
キッチンから声が聞こえた。
「…あ、三つ…お願いします…」
小さな笑い声が伝わる。
「甘党だね」
「…恥ずかしいんですけど…甘いお茶が大好きなんです…」
…紗耶は千晴に負けず劣らず甘いものに目がないのだ。
「お母様…母に笑われるくらいです…」
「…お母様…?」
「ええ。
母はお菓子作りが得意なんですけれど、大人っぽい甘さ控えめなお菓子が多いんです。
でも私にはクリームも蜂蜜もたっぷり入った甘いお菓子を作ってくれて…。
紗耶ちゃんスペシャルよ…て」
「…そう…」
なぜだか幽かに切ないような不思議な声が響く。
「…いいお母様だね…」
呟くように、付け足したのだった。
書棚に段ボールの蔵書がほぼ収まった頃、藤木が紗耶に声をかけた。
天井近くまで張り巡らされた書棚は、まるでヨーロッパの古い図書館のようだ。
…藤木の蔵書は殆どが洋書だったので、そのせいもある。
作り付けの梯子から身軽に降りながら、藤木はにっこりと笑った。
「紗耶さんのお陰でだいぶすっきり片付いたよ。
ありがとう。
…お茶にしよう」
「はい…!
あの…私、何か買ってきましょうか?」
学生棟のコンビニに走ろうかと思い浮かべていると、藤木が隣室の扉を開け、しなやかに中に入ってゆく。
「いや、大丈夫。
今、お茶を淹れるよ。
…古いけれど小さなキッチンがあるんだ。
コーヒーや紅茶くらい淹れられる。
紅茶がいいかな?
頂き物だけれどフォートナム&メイソンのお茶がある」
「は、はい。ありがとうございます…。
あの…」
手伝おうかどうしようか迷っていると…
「適当に座っていて。
…と言ってもまだテーブルも椅子もないね。
悪いけれどラグの上にでも…」
と、貌だけ覗かせ笑った。
その笑顔に少しどきどきしながら頷いた。
「はい!大丈夫です!」
…ラグ…と言っても高価そうな鍋島段通だ。
藤木先生…ってさりげなく趣味がいい…。
密かに感心した。
紗耶はライラック色の長いフレアスカートを皺にならないようにそっと広げて座った。
「紅茶にお砂糖はいくつ?」
キッチンから声が聞こえた。
「…あ、三つ…お願いします…」
小さな笑い声が伝わる。
「甘党だね」
「…恥ずかしいんですけど…甘いお茶が大好きなんです…」
…紗耶は千晴に負けず劣らず甘いものに目がないのだ。
「お母様…母に笑われるくらいです…」
「…お母様…?」
「ええ。
母はお菓子作りが得意なんですけれど、大人っぽい甘さ控えめなお菓子が多いんです。
でも私にはクリームも蜂蜜もたっぷり入った甘いお菓子を作ってくれて…。
紗耶ちゃんスペシャルよ…て」
「…そう…」
なぜだか幽かに切ないような不思議な声が響く。
「…いいお母様だね…」
呟くように、付け足したのだった。