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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
藤木が息を呑んだように呼吸し、ゆっくりと紗耶を見つめた。
「…そう…。あるひととの大切な想い出の品だ…」
「…そう…なんですか…」
…恋人との想い出…かな…と紗耶は思った。
そう思わせる微かに熱の篭った眼差しと声だったのだ。
…なんだか、もやもやする…。
寂しいような、重苦しいような…初めて感じる気持ちに、紗耶自身が戸惑った。
…おかしいわ…私…。
…どうして私は、藤木先生にそんな気持ちを抱くのかしら…。
…分からない…。
分からないことが、なんだか歯痒くて…不安さえ覚える。
不可解な思いを振り払うように、あわ焼のマグカップに口を付ける。
芳醇なダージリンの薫りと、甘い極上のお菓子のような味わいに、ほっとひと息つけた。
「…美味しいです…とても…」
小さく感想を漏らすと、藤木が嬉しそうに微笑った。
「良かった…。
紗耶さんの口に合って…。
君みたいに上流階級のお嬢様に滅多なものは飲ませられないからね」
やや揶揄めいたような口調に、紗耶は困惑した。
「そんな…上流階級だなんて…」
この男に、そんなふうに色眼鏡で見られたくなかったのだ。
…私は…普通の女の子だもの…。
「高遠家が上流階級でなければ、日本にはそんなものは存在しないよ。
…いいじゃないか。
日本が誇る素晴らしい由緒正しき歴史あるお家に嫁ぐなんて、君はとても幸福な女の子だよ。
そのことにプライドを持っていい」
嫌味のない口調で明るく取りなすように答える。
そうして、藤木は改めて紗耶を榛色の美しい瞳でじっと見つめた。
「…聞いていいかな?」
「はい…」
何を聞かれるのだろう…と、少し緊張する。
「…紗耶さんは婚約者のひとを愛している?」
「…そう…。あるひととの大切な想い出の品だ…」
「…そう…なんですか…」
…恋人との想い出…かな…と紗耶は思った。
そう思わせる微かに熱の篭った眼差しと声だったのだ。
…なんだか、もやもやする…。
寂しいような、重苦しいような…初めて感じる気持ちに、紗耶自身が戸惑った。
…おかしいわ…私…。
…どうして私は、藤木先生にそんな気持ちを抱くのかしら…。
…分からない…。
分からないことが、なんだか歯痒くて…不安さえ覚える。
不可解な思いを振り払うように、あわ焼のマグカップに口を付ける。
芳醇なダージリンの薫りと、甘い極上のお菓子のような味わいに、ほっとひと息つけた。
「…美味しいです…とても…」
小さく感想を漏らすと、藤木が嬉しそうに微笑った。
「良かった…。
紗耶さんの口に合って…。
君みたいに上流階級のお嬢様に滅多なものは飲ませられないからね」
やや揶揄めいたような口調に、紗耶は困惑した。
「そんな…上流階級だなんて…」
この男に、そんなふうに色眼鏡で見られたくなかったのだ。
…私は…普通の女の子だもの…。
「高遠家が上流階級でなければ、日本にはそんなものは存在しないよ。
…いいじゃないか。
日本が誇る素晴らしい由緒正しき歴史あるお家に嫁ぐなんて、君はとても幸福な女の子だよ。
そのことにプライドを持っていい」
嫌味のない口調で明るく取りなすように答える。
そうして、藤木は改めて紗耶を榛色の美しい瞳でじっと見つめた。
「…聞いていいかな?」
「はい…」
何を聞かれるのだろう…と、少し緊張する。
「…紗耶さんは婚約者のひとを愛している?」