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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…そのとき、部屋の扉が静かにノックされた。
「…紗耶ちゃん…。
まだ起きている?」
千晴の声だ。
「はい。お兄ちゃま」
駆け寄り扉を開けると、部屋着姿の千晴が佇んでいた。
…白地にベージュのストライプの柔らかな上質のコットン生地のシャツにゆったりとした紺色のパンツ。
ラフな格好でも千晴にはやや浮世離れした典雅な気品が漂っている。
勿忘草色のネグリジェの自分が少し恥ずかしい…。
「…お洗濯?」
紗耶の手が濡れたハンカチを握りしめているのに眼を遣り、尋ねる。
「は、はい」
なんとなく後ろめたくて、さりげなくハンカチを隠す。
「メイドに言って洗濯室に回せば良いのに…」
紗耶は小さく首を振った。
「ハンカチ1枚ですもの。
皆さんのお手を煩わすほどのものじゃないわ」
千晴が珍しく真顔で諭すように語り始めた。
「ハンカチ1枚だからこそ…だよ。
メイドや下僕から仕事を奪ってはいけない。
彼女たち、彼らに仕事を与えること、存在意義を与えることは我々の重要な責務だ」
紗耶はどきりとした。
…その表情は紗耶が初めて見る、いにしえの昔から脈々と続く歴史と伝統に守られた高遠家当主としての千晴の厳格な一面であったからだ。
怯えたように黙り込んだ紗耶に、千晴は直ぐに眼差しを和らげる。
そうして、紗耶の強張る白い手を優しく引き寄せた。
「…ごめんね。
厳しい言い方をしてしまったね」
「…紗耶ちゃん…。
まだ起きている?」
千晴の声だ。
「はい。お兄ちゃま」
駆け寄り扉を開けると、部屋着姿の千晴が佇んでいた。
…白地にベージュのストライプの柔らかな上質のコットン生地のシャツにゆったりとした紺色のパンツ。
ラフな格好でも千晴にはやや浮世離れした典雅な気品が漂っている。
勿忘草色のネグリジェの自分が少し恥ずかしい…。
「…お洗濯?」
紗耶の手が濡れたハンカチを握りしめているのに眼を遣り、尋ねる。
「は、はい」
なんとなく後ろめたくて、さりげなくハンカチを隠す。
「メイドに言って洗濯室に回せば良いのに…」
紗耶は小さく首を振った。
「ハンカチ1枚ですもの。
皆さんのお手を煩わすほどのものじゃないわ」
千晴が珍しく真顔で諭すように語り始めた。
「ハンカチ1枚だからこそ…だよ。
メイドや下僕から仕事を奪ってはいけない。
彼女たち、彼らに仕事を与えること、存在意義を与えることは我々の重要な責務だ」
紗耶はどきりとした。
…その表情は紗耶が初めて見る、いにしえの昔から脈々と続く歴史と伝統に守られた高遠家当主としての千晴の厳格な一面であったからだ。
怯えたように黙り込んだ紗耶に、千晴は直ぐに眼差しを和らげる。
そうして、紗耶の強張る白い手を優しく引き寄せた。
「…ごめんね。
厳しい言い方をしてしまったね」