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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
藤木の助手のアルバイトは、最初は慣れぬことの連続で戸惑うことが多かったが、日を追うごとに慣れてきた。

藤木は週にニ日、文学部のキャンパスに講義に来る。
その日に藤木が授業で使う文献を大学の図書館で集めたり、学生に配る資料などをコピーしたり、研究室に掛かってくる電話応対をするのが、与えられた当面の紗耶の仕事だ。

時間は紗耶の授業やサークル活動以外の時間で良いと言われているので、一日数時間ていどだ。
それくらいで役に立つのだろうか?と心配になり、藤木に尋ねると
「すごく助かるよ。
コロンビアでは一人で一切合切やっていたから大変だった。
…研究室が魔窟みたいになってしまってね」
と、いたずらっ子のような表情で笑ったのだ。

「…では、先生がいらっしゃる日以外でも来られたら来ますね。
郵便物の仕分けや電話応対なども気になりますし…」
そう提案した。

…何しろ最初にもらったアルバイト代がどうみても時給以上に法外に入っていて、紗耶は申し訳なく思っていたのだ。

『…んなこと言って、あのキザ野郎にこき使われてんじゃねえだろうなあ?
…紗耶、エロいこと、されてないか?』
隼人はむっとしたように言っていたが、藤木はそんな低俗なひとではないと紗耶は思う。
紗耶を見る眼はいつだって優しく…父親のような、兄のような…それから少し、なんとなく切ないような不思議な眼差しだからだ。

『…柊司に聞いてみたけれど、なかなか立派な人物のようだね。
奥様の澄佳さんの古い知り合いみたいだし…。
…柊司の太鼓判があれば、まあ、心配はないだろう…』
渋々といった風に藤木の元でアルバイトすることを認めてくれた千晴を思い出し、紗耶はコピー機の前で手を止めた。

…お兄ちゃま…紗耶を信用していないのかしら…。

思わずため息が漏れる。

今まではその類の千晴の言動は、紗耶を独占したいためなのではないかと、くすぐったいような嬉しい気持ちだった。

…けれど、今は少々複雑な重い感情に支配されている。

『僕が紗耶ちゃんを理想的な御台所にする。
君は僕に付いてくればそれでいい』

あの夜の千晴の言葉が、小さな棘のように突き刺さり、紗耶を憂鬱にさせるのだ。

…どうして…?

…どうして、今の紗耶のままじゃだめなの…?

ぼんやりしている紗耶の背中に、穏やかな声が掛かる。

「…どうしたの…?紗耶さん…」




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