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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
振り返ると、入り口の扉の前に藤木が佇んでいた。
「…先生…」
慌てて、膝を折る。
「こんにちは。ごきげんよう…」
…と、つい徳子にするような正式なお辞儀と挨拶をしてしまい、頰を赤らめる。
「ごきげんよう、紗耶さん」
藤木は特別戸惑わず、胸にしなやかに手を当て、さながら品位ある英国貴族のような優雅な挨拶を返してくれたのだ。
「お帰りなさい。先生」
講義を終えた藤木に対し自然に出た言葉だったが、彼は一瞬眼を見張り…眩しそうに微笑んだ。
「…お帰りなさい…か。
良い言葉だね。
…久しぶりに聞いたよ」
「…あ…」
…そうだわ…。
藤木先生は確か離婚されてニューヨークから帰国されたんだわ…。
一人息子は日本語の勉強を兼ねて大学の寮に入ったので、今は阿佐ヶ谷のマンションに一人住まいだという。
「…ただいま。紗耶さん…」
藤木は微かに照れたように答えた。
紗耶もなんだか甘酸っぱいようなどきどきするような不思議な気持ちに満たされ、そんな自分を誤魔化すようににっこりと笑いかけた。
「今、お茶を淹れますね。
紅茶のマドレーヌを焼いてきたのですけれど…実は、初めてなんです。
毒味してください」
藤木はくすりと笑い、目配せをした。
「喜んでいただくよ」
「…先生…」
慌てて、膝を折る。
「こんにちは。ごきげんよう…」
…と、つい徳子にするような正式なお辞儀と挨拶をしてしまい、頰を赤らめる。
「ごきげんよう、紗耶さん」
藤木は特別戸惑わず、胸にしなやかに手を当て、さながら品位ある英国貴族のような優雅な挨拶を返してくれたのだ。
「お帰りなさい。先生」
講義を終えた藤木に対し自然に出た言葉だったが、彼は一瞬眼を見張り…眩しそうに微笑んだ。
「…お帰りなさい…か。
良い言葉だね。
…久しぶりに聞いたよ」
「…あ…」
…そうだわ…。
藤木先生は確か離婚されてニューヨークから帰国されたんだわ…。
一人息子は日本語の勉強を兼ねて大学の寮に入ったので、今は阿佐ヶ谷のマンションに一人住まいだという。
「…ただいま。紗耶さん…」
藤木は微かに照れたように答えた。
紗耶もなんだか甘酸っぱいようなどきどきするような不思議な気持ちに満たされ、そんな自分を誤魔化すようににっこりと笑いかけた。
「今、お茶を淹れますね。
紅茶のマドレーヌを焼いてきたのですけれど…実は、初めてなんです。
毒味してください」
藤木はくすりと笑い、目配せをした。
「喜んでいただくよ」