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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
華子の言葉の意味を問い返そうとした時、紫織が紗耶の手を引いた。
「さあ、紗耶ちゃん。お席に着きましょう。
…もうすぐ大お祖母様のお言葉が始まるわ」
…席は上座から見て最前列…華子らが居並ぶ本家筋の並びであった。
紗耶の家、二宮家は高遠家から血縁的にはかなり遠い分家筋である。
てっきりもっと後方の席かと思っていた紗耶は動揺した。
「…お母様…本当に、ここ?」
家政婦が案内したのだから間違いはない。
けれど、尋ねずにはいられなかった。
紫織はさして驚く様子もなく微かに微笑んだ。
「ええ、ここよ。
…さあ、お掛けなさい。お袖を直してあげるわ」
優しい仕草で和装に慣れていない紗耶に甲斐甲斐しく世話を焼く。
…一方、父、政彦の様子はいつもと少し違った。
普段温和な父が珍しく、やや癇性的に眉に皺を寄せて腕を組んでいるのだ。
先刻から何か考え込んでいるように、一言も発しない。
紗耶はそっと尋ねた。
「…お父様、どうなさったの?
何か…ご機嫌斜めみたい…」
政彦ははっとしたように表情を緩め、口元に笑みを浮かべた。
「…何でもないよ。
…紗耶、とても可愛いよ…」
政彦の手が、優しく愛おしげに紗耶の髪を撫でた。
紗耶はようやくほっとして、椅子に深く腰掛けた。
「さあ、紗耶ちゃん。お席に着きましょう。
…もうすぐ大お祖母様のお言葉が始まるわ」
…席は上座から見て最前列…華子らが居並ぶ本家筋の並びであった。
紗耶の家、二宮家は高遠家から血縁的にはかなり遠い分家筋である。
てっきりもっと後方の席かと思っていた紗耶は動揺した。
「…お母様…本当に、ここ?」
家政婦が案内したのだから間違いはない。
けれど、尋ねずにはいられなかった。
紫織はさして驚く様子もなく微かに微笑んだ。
「ええ、ここよ。
…さあ、お掛けなさい。お袖を直してあげるわ」
優しい仕草で和装に慣れていない紗耶に甲斐甲斐しく世話を焼く。
…一方、父、政彦の様子はいつもと少し違った。
普段温和な父が珍しく、やや癇性的に眉に皺を寄せて腕を組んでいるのだ。
先刻から何か考え込んでいるように、一言も発しない。
紗耶はそっと尋ねた。
「…お父様、どうなさったの?
何か…ご機嫌斜めみたい…」
政彦ははっとしたように表情を緩め、口元に笑みを浮かべた。
「…何でもないよ。
…紗耶、とても可愛いよ…」
政彦の手が、優しく愛おしげに紗耶の髪を撫でた。
紗耶はようやくほっとして、椅子に深く腰掛けた。