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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
「…皆さん、ご機嫌よう。
本日は遠路遥々よくお集まりくださいました。
今年は普段相見えることの少ない一族の方々と聖夜を迎えることができました。
これはとても喜ばしいことです」
徳子が厳かに口を開いた。
八十を超えても尚、その口調は朗々と響き渡り、高遠家の女帝の健在ぶりを改めて居並ぶ者たちにアピールさせた。
「…そして今年の聖夜は、我が高遠家にとって特別な年となるのです。
…こちらに居る千晴…高遠家当主が三十歳を迎えました」
徳子はそう言って、傍らの千晴を愛おしげに見遣る。
傲慢な獅子のような女帝と陰で囁かれている徳子だが、一粒種の千晴に対してはメレンゲ菓子のように甘く優しい一端が透けて見えた。
千晴は悠然と美しい姿勢はそのままに、その黒眼勝ちの涼やかな瞳と形の良い唇に柔らかな微笑みを浮かべてみせた。
…それは、居並ぶ若い令嬢たちに甘いため息をつかせるに十分なものであった。
「…三十歳を迎えた聖夜に、高遠家の当主には先祖代々の決まりごととして為さねば成らぬことがございます」
徳子の声が大広間に高らかに響き渡る。
「それは一族の娘の中から己れにふさわしい花嫁を、この場で選ぶことです」
本日は遠路遥々よくお集まりくださいました。
今年は普段相見えることの少ない一族の方々と聖夜を迎えることができました。
これはとても喜ばしいことです」
徳子が厳かに口を開いた。
八十を超えても尚、その口調は朗々と響き渡り、高遠家の女帝の健在ぶりを改めて居並ぶ者たちにアピールさせた。
「…そして今年の聖夜は、我が高遠家にとって特別な年となるのです。
…こちらに居る千晴…高遠家当主が三十歳を迎えました」
徳子はそう言って、傍らの千晴を愛おしげに見遣る。
傲慢な獅子のような女帝と陰で囁かれている徳子だが、一粒種の千晴に対してはメレンゲ菓子のように甘く優しい一端が透けて見えた。
千晴は悠然と美しい姿勢はそのままに、その黒眼勝ちの涼やかな瞳と形の良い唇に柔らかな微笑みを浮かべてみせた。
…それは、居並ぶ若い令嬢たちに甘いため息をつかせるに十分なものであった。
「…三十歳を迎えた聖夜に、高遠家の当主には先祖代々の決まりごととして為さねば成らぬことがございます」
徳子の声が大広間に高らかに響き渡る。
「それは一族の娘の中から己れにふさわしい花嫁を、この場で選ぶことです」