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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…紗耶さん…、紗耶さん…」
藤木の声に、紗耶ははっと我に帰る。
窓辺のデスクに座り、パソコンを操っていた藤木が心配そうな表情をして紗耶を見遣っていた。
「あ…!すみません!ぼうっとしてしまって…」
…私ったら…つい思い出してしまって…。
慌てて、学生に配布するコピーしたての資料をホチキス留めする。
「もう出来ます!
お待たせしてしまって、すみません」
「午後の講義の分だからまだ大丈夫だよ。
慌てないで」
優しく言われたが気が済まず、資料を手早く纏め
「いいえ。今すぐ…」
と動作を早めた刹那に…
「あっ…!」
指先に火が触れたような熱い衝撃が走った。
新品の鋭い紙の端で、指先を切ってしまったのだ。
「どうしたの?」
紗耶の小さな叫び声に機敏に反応した藤木が足早に近づいてくる。
「…いえ…大丈夫です。
ちょっと…紙の端で指を切っただけですから…」
なんでもないように笑う紗耶に、藤木は首を振り手を差し出した。
「見せて」
「だ、大丈夫です。
すぐに治りますわ」
「だめだよ。紗耶さんの綺麗な白い指に、跡でも残ったら大変だ」
…おいで…
と、手を引かれた。
「消毒しよう。
…そこのソファに掛けて」
「…あ…」
柔らかく掴まれた出首が、切った指先より熱く疼いた。
藤木の手はひんやりとして、紗耶の手の熱さが顕著だ。
…脈の速さを、熱を、先生に悟られませんように…。
紗耶は必死で祈りながら、男の美しい背中を見つめた。
藤木の声に、紗耶ははっと我に帰る。
窓辺のデスクに座り、パソコンを操っていた藤木が心配そうな表情をして紗耶を見遣っていた。
「あ…!すみません!ぼうっとしてしまって…」
…私ったら…つい思い出してしまって…。
慌てて、学生に配布するコピーしたての資料をホチキス留めする。
「もう出来ます!
お待たせしてしまって、すみません」
「午後の講義の分だからまだ大丈夫だよ。
慌てないで」
優しく言われたが気が済まず、資料を手早く纏め
「いいえ。今すぐ…」
と動作を早めた刹那に…
「あっ…!」
指先に火が触れたような熱い衝撃が走った。
新品の鋭い紙の端で、指先を切ってしまったのだ。
「どうしたの?」
紗耶の小さな叫び声に機敏に反応した藤木が足早に近づいてくる。
「…いえ…大丈夫です。
ちょっと…紙の端で指を切っただけですから…」
なんでもないように笑う紗耶に、藤木は首を振り手を差し出した。
「見せて」
「だ、大丈夫です。
すぐに治りますわ」
「だめだよ。紗耶さんの綺麗な白い指に、跡でも残ったら大変だ」
…おいで…
と、手を引かれた。
「消毒しよう。
…そこのソファに掛けて」
「…あ…」
柔らかく掴まれた出首が、切った指先より熱く疼いた。
藤木の手はひんやりとして、紗耶の手の熱さが顕著だ。
…脈の速さを、熱を、先生に悟られませんように…。
紗耶は必死で祈りながら、男の美しい背中を見つめた。