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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…婚約式…?」
藤木の美しい榛色の瞳が紗耶を見つめる。
「…はい。
…高遠本家に代々伝わるしきたりだそうです。
当主の婚約が正式に決定したことを親族の方々に承認していただいて、私をお披露目するためだそうです」
「へえ…。さすがは名家だね。
如何にも格式高い由緒正しい歴史を感じるね」
「…そうですね…」
藤木が軽やかに立ち上がり、救急箱を棚に仕舞う。
「…良かったじゃない。おめでとう。
結婚式の前にそんな華々しいお式ができるなんて…。
とても贅沢で幸せなことだよ。
第一…君が愛する千晴さんとの仲を正式に承認してもらえるなら、それは素晴らしいことだ」
「…ええ…。そうですよね…」
藤木に手当てしてもらった指先を見つめる。
白い絆創膏をそっと撫でる。
…男の、熱がまだ仄かに残っているような気がして…。
「おめでとう。紗耶さん。
いよいよ花嫁様になる第一歩を歩むんだね…」
キッチンに立つ藤木から、聞こえたその声は至極穏やかで、祝福の色合いに満ちていた。
「…第一歩…」
不意に、指先の痛みが蘇るように疼いた。
「…私…」
…その痛みが、決して言ってはならないことを口走らせるのだ。
「…本当に…お兄ちゃまと結婚して良いのかしら…」
ティファールを持つ藤木の手が止まり、ゆっくりと紗耶を振り返った。
藤木の美しい榛色の瞳が紗耶を見つめる。
「…はい。
…高遠本家に代々伝わるしきたりだそうです。
当主の婚約が正式に決定したことを親族の方々に承認していただいて、私をお披露目するためだそうです」
「へえ…。さすがは名家だね。
如何にも格式高い由緒正しい歴史を感じるね」
「…そうですね…」
藤木が軽やかに立ち上がり、救急箱を棚に仕舞う。
「…良かったじゃない。おめでとう。
結婚式の前にそんな華々しいお式ができるなんて…。
とても贅沢で幸せなことだよ。
第一…君が愛する千晴さんとの仲を正式に承認してもらえるなら、それは素晴らしいことだ」
「…ええ…。そうですよね…」
藤木に手当てしてもらった指先を見つめる。
白い絆創膏をそっと撫でる。
…男の、熱がまだ仄かに残っているような気がして…。
「おめでとう。紗耶さん。
いよいよ花嫁様になる第一歩を歩むんだね…」
キッチンに立つ藤木から、聞こえたその声は至極穏やかで、祝福の色合いに満ちていた。
「…第一歩…」
不意に、指先の痛みが蘇るように疼いた。
「…私…」
…その痛みが、決して言ってはならないことを口走らせるのだ。
「…本当に…お兄ちゃまと結婚して良いのかしら…」
ティファールを持つ藤木の手が止まり、ゆっくりと紗耶を振り返った。