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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…先生…嘘言ってるわ…。
だって…だって、先生…私にすごく優しくしてくれたわ…。
自信を持ちなさい…て…。
お母様と比べなくていい…。
自分の良さに気づきなさい…て…。
私…私…すごく嬉しかったのよ…。
そんなこと…言われたこと、なかったから…。
それも…嘘…?」
溢れる涙が、白い頬を濡らす。
藤木は振り向きもしない。
無機質な声だけが響き続ける。
「嘘だよ。
紫織を取り戻したかったから、君を手懐けようとしたんだ。
…世間知らずの君を丸め込むのなんて、赤子の手を捻るより容易いことだったよ」
冷笑混じりの言葉に、紗耶は首を振る。
「嘘よ…!
さっき…好きだ…て、言ってくれたわ…!」
…君が、好きだ…!
そう答えてくれた。
自分を抱きしめる腕の熱さと強さは、まだ紗耶の身体に残っているのに…。
藤木がさも煩げにため息をついた。
「だから。それは紫織を手に入れるためさ。
君を抱き込めば、紫織に迫れると思ったんだ。
…けれど、もういい。
紫織はどうやら君のお父様と離婚する気はないようだし、コブ付きの女と再婚するのはさすがにハードルが高い。
息子にも知られていたし、これ以上厄介ごとは御免だ」
「…先生…!」
思わず縋りついた藤木の腕を、男は容赦なく振り払った。
「帰りなさい。
フィアンセのところに。
…君にはやはり非の打ち所のない美しい王子様がお似合いだ。
未来の高遠本家の御台所様。
お伽噺のハッピーエンドを完成させるんだ。
それが一番いい」
「…先生…!
先生は私のことを…!」
男が振り返り、その美しいがぞっとするほど冷ややかな榛色の瞳で見下した。
「ぐずぐずうるさいな。
君のことなんて、なんとも思っちゃいないよ。
世間知らずのお嬢ちゃまのご機嫌を取るのもいい加減飽きたんだ」
その言葉に、身体が悴む。
息を呑む紗耶に、藤木は吐き捨てるように言った。
「早く出てゆけ。
そして、二度とここには来るな」
だって…だって、先生…私にすごく優しくしてくれたわ…。
自信を持ちなさい…て…。
お母様と比べなくていい…。
自分の良さに気づきなさい…て…。
私…私…すごく嬉しかったのよ…。
そんなこと…言われたこと、なかったから…。
それも…嘘…?」
溢れる涙が、白い頬を濡らす。
藤木は振り向きもしない。
無機質な声だけが響き続ける。
「嘘だよ。
紫織を取り戻したかったから、君を手懐けようとしたんだ。
…世間知らずの君を丸め込むのなんて、赤子の手を捻るより容易いことだったよ」
冷笑混じりの言葉に、紗耶は首を振る。
「嘘よ…!
さっき…好きだ…て、言ってくれたわ…!」
…君が、好きだ…!
そう答えてくれた。
自分を抱きしめる腕の熱さと強さは、まだ紗耶の身体に残っているのに…。
藤木がさも煩げにため息をついた。
「だから。それは紫織を手に入れるためさ。
君を抱き込めば、紫織に迫れると思ったんだ。
…けれど、もういい。
紫織はどうやら君のお父様と離婚する気はないようだし、コブ付きの女と再婚するのはさすがにハードルが高い。
息子にも知られていたし、これ以上厄介ごとは御免だ」
「…先生…!」
思わず縋りついた藤木の腕を、男は容赦なく振り払った。
「帰りなさい。
フィアンセのところに。
…君にはやはり非の打ち所のない美しい王子様がお似合いだ。
未来の高遠本家の御台所様。
お伽噺のハッピーエンドを完成させるんだ。
それが一番いい」
「…先生…!
先生は私のことを…!」
男が振り返り、その美しいがぞっとするほど冷ややかな榛色の瞳で見下した。
「ぐずぐずうるさいな。
君のことなんて、なんとも思っちゃいないよ。
世間知らずのお嬢ちゃまのご機嫌を取るのもいい加減飽きたんだ」
その言葉に、身体が悴む。
息を呑む紗耶に、藤木は吐き捨てるように言った。
「早く出てゆけ。
そして、二度とここには来るな」