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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「ほら、サーヤ、入って。遠慮しないで。
あ、段差あるから気をつけて」
アネゴが玄関の中に招き入れながら、紗耶を振り返った。

「…はい…。…あの…すみません…。
…お邪魔いたします…」
紗耶は小さな声で詫びながら中に入った。
「隼人、ほら。あんたも入んな」
アネゴが声をかけるのに
「俺は湿布を買ってくる。
…アネゴ、紗耶を頼んだ」
隼人は三和土で紗耶のローヒールを丁寧に脱がせると、さっさと姿を消した。

「あ、あの…!大丈夫ですから…!」
慌てて引き止める紗耶に
「やらせてあげな。
隼人はサーヤに何かしてあげたくて仕方ないんだよ。
…今みたいにあんたが傷ついているときには特にさ…」
アネゴはウィンクし
「ほら、入った入った」
と歌うように促した。


…根津駅から徒歩十分ほどの住宅地にある平屋建ての古民家…。
ここがアネゴの住まいだ。

「大家さんのおばあちゃんは親戚でさ。
ここは離れなんだけどね。
そのおばあちゃんもう高齢だから、あたしがちょっとしたお手伝いや家の修理やおばあちゃんの用心棒やる条件でタダで住まわせてもらってんの。
ほら、年寄りの一人暮らしって物騒じゃん?
あたしみたいな外見ド派手な女が居座ってるとさ、オレオレ詐欺も近寄ってこないワケ。
…あ、その辺テキトーに座って」
楽譜や本や三味線の弦が雑多に積まれている派手なショッキングピンクの布張りのソファを指差した。
「…は、はい…」
紗耶は丁寧にそれらを少しだけ端に寄せ、おずおずと腰を下ろした。

その様子を見ながら
「さてと…。
まずは…お兄ちゃまに連絡だね。
サーヤ、スマホ貸して?」
アネゴはにっこり笑うと、テキパキと手を出したのだった。




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