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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…眠れない?」
紗耶の三度目の寝返りののち、アネゴが静かに尋ねた。
…暗闇の中、アネゴの白い貌がこちらを見つめていた。
…取り留めのないことを話しながら、三人が寝付いたのは深夜1時を過ぎてからだった。
アネゴと紗耶は和室に布団を敷き、隼人は隣のリビングのソファにごろりと横になった。
布団を敷かなくて良いのか?とおずおずと尋ねる紗耶に
『うちのサークル、男子はいつも雑魚寝だからさ』
アネゴは豪快に笑った。
「…あ、すみません…」
紗耶は小さな声で詫びる。
…隼人は寝ているようだった。
静かな寝息が聞こえる。
「ううん。いいんだよ。
そりゃ、眠れないよねえ。
そんなショックなことがあった夜はさ…」
…しみじみとした優しい声に甘えるように紗耶は口を開いた。
「…おかしいですよね…」
「なにが?」
「…私…あんなに拒まれたのに…まだ藤木先生が好きなんです…」
「…そうか…」
「…それから…お兄ちゃまのことも…やっぱり好きです…」
「そっかあ…」
「二人とも好きです。
…お兄ちゃまは…小さな頃からずっと、気持ちは変わりません。
私の憧れの存在です。
…藤木先生は…。
先生のことを考えると、胸が苦しくなって…なぜだか分からないけれど、泣きたくなるんです。
…だから…このまま、お兄ちゃまと結婚していいのか…。
自分でも、分かりません…」
「うん…」
穏やかな、相槌だけが聞こえた。
「…ただ…分かっていることは…」
…暗がりに男の面影が浮かぶ…。
それは、あの美しい榛色の瞳の持ち主だ。
その面影に、告白するように紗耶は呟いた。
「…もう一度、藤木先生に会いたいです…」
紗耶の三度目の寝返りののち、アネゴが静かに尋ねた。
…暗闇の中、アネゴの白い貌がこちらを見つめていた。
…取り留めのないことを話しながら、三人が寝付いたのは深夜1時を過ぎてからだった。
アネゴと紗耶は和室に布団を敷き、隼人は隣のリビングのソファにごろりと横になった。
布団を敷かなくて良いのか?とおずおずと尋ねる紗耶に
『うちのサークル、男子はいつも雑魚寝だからさ』
アネゴは豪快に笑った。
「…あ、すみません…」
紗耶は小さな声で詫びる。
…隼人は寝ているようだった。
静かな寝息が聞こえる。
「ううん。いいんだよ。
そりゃ、眠れないよねえ。
そんなショックなことがあった夜はさ…」
…しみじみとした優しい声に甘えるように紗耶は口を開いた。
「…おかしいですよね…」
「なにが?」
「…私…あんなに拒まれたのに…まだ藤木先生が好きなんです…」
「…そうか…」
「…それから…お兄ちゃまのことも…やっぱり好きです…」
「そっかあ…」
「二人とも好きです。
…お兄ちゃまは…小さな頃からずっと、気持ちは変わりません。
私の憧れの存在です。
…藤木先生は…。
先生のことを考えると、胸が苦しくなって…なぜだか分からないけれど、泣きたくなるんです。
…だから…このまま、お兄ちゃまと結婚していいのか…。
自分でも、分かりません…」
「うん…」
穏やかな、相槌だけが聞こえた。
「…ただ…分かっていることは…」
…暗がりに男の面影が浮かぶ…。
それは、あの美しい榛色の瞳の持ち主だ。
その面影に、告白するように紗耶は呟いた。
「…もう一度、藤木先生に会いたいです…」