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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…けれど、結局、紗耶は何も出来ぬまま時を過ごした。
松濤の屋敷に帰り、千晴の貌を見ると、脚が震えるほどの底知れぬ罪悪感に苛まれたからだ。 

紗耶が帰宅するや否や、千晴は広い玄関ホールまで迎え出た。
「お帰り、紗耶ちゃん…。
紗耶ちゃんに一晩会えないだけで寂しいものだね…。
…昨夜はよく眠れなかったよ…」
まるで天鵞絨のように滑らかな優しい声で囁かれ、抱きしめられると、紗耶はもう何も言えなくなってしまった…。

…その逞しい胸からは、身嗜みの良い千晴が愛用するゲランの夜間飛行が仄かに薫った。
その大きくしなやかな手は、何も疑うことなく、紗耶の髪を愛おしく撫でる。

…私は…なんて不埒な…罰当たりなことを考えていたのだろうか…と。
千晴というれっきとした完璧な婚約者がありながら、他の男を好きになるなど…。
千晴に申し訳なく、胸が締め付けられるように痛んだ。

「…お兄ちゃま…」
思わず声を詰まらせる。

「…大好きだよ…。紗耶ちゃん…。
…早く婚約式を迎えたいな…。
そうしたら、君はもっと僕のものになる…」
千晴が紗耶を強く優しく抱きしめ、大切そうに額にキスを落とす。

「…お兄ちゃま…。
…私も…よ…」
小さな声で、囁き返す。

…ほかのひとに恋しているなんて…やはり、許されないことなのだと、紗耶は藤木への想いを胸のうちに閉じ込めようとする。

…そうよ…。

私には、お兄ちゃまがいる…。
小さな頃から、ずっと憧れてきた…美しく優しく聡明で頼りになる…
まるで夢の王子様のような、お兄ちゃまがいるじゃない…。

「…お兄ちゃま…。
大好きよ…」

…自分に言い聞かせるように繰り返し…紗耶は千晴の胸の中でそっと眼を閉じた…。
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