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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「お父様はお元気?」
紫織の淹れたクリームティーは本当に美味しい。
リーフルで厳選されたクリームティーに合うアッサムに牛乳が好きな紗耶のためにミルク多め、甘めのほっと落ち着く優しい味だ。
「ええ。相変わらずお忙しいけれど、お元気よ。
紗耶ちゃんの婚約式が近づいてきて、少し寂しそうでいらっしゃるけれどね…。
今、出張でボストンにいらっしゃるの。
あさってお帰りになるわ。
…早くあさってにならないかしら…」
政彦の帰りが待ちきれないように嬉しそうに瞳を輝かせる紫織は、まるで新妻のようだ。
「…そう。お元気なら良かったわ」
「婚約式のお支度は進んでいるの?
…私が妊娠中でなければもっと紗耶ちゃんのお手伝いができたのに…。
ごめんなさいね」
済まなそうに詫びる紫織に、慌て首を振る。
「ううん。そんなの気にしないで、お母様。
紗耶はもう子どもじゃないわ。
家政婦の八重さんたちが熱心に準備してくださっているし…高遠の大お祖母様もお優しいわ。
紗耶にご自身が婚約式にお召しになったドレスを下さるそうなの。
高遠ご本家に代々伝わるアクセサリーや温室で特別に栽培した綺麗なお花も…。
すべて大お祖母様がコーディネートしてくださるし…。
だから、大丈夫よ」
「そう…。それは良かったわ…」
紫織はほっとしたように微笑み、白く美しい手でカップを取り上げる。
「もちろんお式には必ず行きますからね。
…ドレスかお着物か迷っているの。
お父様は帯が苦しいだろうから、ドレスにしなさいと仰るのだけれど、お着物の方がお腹は目立たないわよね?」
「…お母様がお楽な方がいいのじゃないかしら…?
お式は長丁場みたいだから…」
「そうね。無理してはいけないわね。
やっぱりドレスにしようかしら…」
無邪気な紫織に微笑み返し…躊躇いながら、紗耶は口を開いた。
「…あのね…。
…あのね…お母様…。
…お母様…昔…」
紫織の淹れたクリームティーは本当に美味しい。
リーフルで厳選されたクリームティーに合うアッサムに牛乳が好きな紗耶のためにミルク多め、甘めのほっと落ち着く優しい味だ。
「ええ。相変わらずお忙しいけれど、お元気よ。
紗耶ちゃんの婚約式が近づいてきて、少し寂しそうでいらっしゃるけれどね…。
今、出張でボストンにいらっしゃるの。
あさってお帰りになるわ。
…早くあさってにならないかしら…」
政彦の帰りが待ちきれないように嬉しそうに瞳を輝かせる紫織は、まるで新妻のようだ。
「…そう。お元気なら良かったわ」
「婚約式のお支度は進んでいるの?
…私が妊娠中でなければもっと紗耶ちゃんのお手伝いができたのに…。
ごめんなさいね」
済まなそうに詫びる紫織に、慌て首を振る。
「ううん。そんなの気にしないで、お母様。
紗耶はもう子どもじゃないわ。
家政婦の八重さんたちが熱心に準備してくださっているし…高遠の大お祖母様もお優しいわ。
紗耶にご自身が婚約式にお召しになったドレスを下さるそうなの。
高遠ご本家に代々伝わるアクセサリーや温室で特別に栽培した綺麗なお花も…。
すべて大お祖母様がコーディネートしてくださるし…。
だから、大丈夫よ」
「そう…。それは良かったわ…」
紫織はほっとしたように微笑み、白く美しい手でカップを取り上げる。
「もちろんお式には必ず行きますからね。
…ドレスかお着物か迷っているの。
お父様は帯が苦しいだろうから、ドレスにしなさいと仰るのだけれど、お着物の方がお腹は目立たないわよね?」
「…お母様がお楽な方がいいのじゃないかしら…?
お式は長丁場みたいだから…」
「そうね。無理してはいけないわね。
やっぱりドレスにしようかしら…」
無邪気な紫織に微笑み返し…躊躇いながら、紗耶は口を開いた。
「…あのね…。
…あのね…お母様…。
…お母様…昔…」

