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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…まあ、これはこれは…お美しいこと…!
…まるで可憐な白雪姫ね…」
辺りを払うような威厳とオーラに満ちた声が響く。
正装の深いアメジスト色のドレスを身に付けた徳子が佇んでいた。

「大奥様…!」
七重は素早く女主人を迎えに進み出る。
「紗耶さんのお姿を早く拝見したくてね。
年寄りはせっかちでいけないわね」
「大お祖母様、ご機嫌よう…」
膝を折り、お辞儀する紗耶の前に徳子のクリスタルの杖が止まった。
「よくお似合いですよ…。
お美しいわ。紗耶さん」

「…恐れ入ります。大お祖母様…」
貌を上げると、微かにひんやりと冷たいゲランのミツコの薫りを纏う白い指が、紗耶の頬を撫でる。
「…ペールブルーのドレスと、美しい真珠がよくお似合いね…。
穢れを知らない処女の貴女にぴったりだわ…」

…けれど…

徳子の指が、薄紅が塗られた紗耶の口唇をそっとなぞる。

「…お美しいけれど、どこか哀しげね…」
紗耶は息を呑む。
「…ううん。
何かを迷っていらっしゃるお貌だわね」
「…大お祖母様…」
紗耶が震える口唇を開く前に、徳子が手を離す。
「…何に迷っていらっしゃるかは問題ではないわ。
そんなことはどうでもよろしいの。
貴女が何を選択なさるか…それが大切なの」
猛禽類に似た鋭い眼差しは、何故か静謐な色を湛えている。

「…貴女が最良の選択をされることを、私は信じておりますよ」
謎のような言葉を紗耶の白い耳朶に吹き込むと、しなやかに背を向けた。

「…大お祖母様…!
大お祖母様は…!」
去りゆく徳子の背中に叫ぶ。
…大お祖母様は、あの切なくも美しい恋をもう忘れられたのですか…?
その選択を、悔いてはおられないのですか…?
問いかけたい言葉を、けれど紗耶は必死で胸のうちに抑えた。

年老いても尚、侵し難い威厳と気品の背中を見せながら、徳子は扉の前で立ち止まる。

「…私は、自分の人生に誇りを持って生きておりますよ」

…貴女もそうでありますように…。

祈りのような厳かな声が紗耶の耳に届いたとき、その扉は静かに閉じられたのだ…。



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