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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…何?紗耶ちゃん?」
千晴が静かに振り返る。
…美しい彫像のような美貌が柔かに微笑んでいる。
大好きな…大好きな千晴の笑顔だ。
昔からずっと憧れて、慕っていた、美しい千晴の貌だ。
…あの麗らかな春の日…。
色鮮やかなアンジェラの花の下、紗耶を助け、微笑みかけてくれた千晴…。
今でも大好きだ。
大好きなのだ。
…けれど…。
「…千晴お兄ちゃま…。
…あの…私…私…」
「どうしたの?紗耶ちゃん」
やや怪訝そうにしながら、千晴が紗耶に向き直り、戻ってくる。
…言わなければ…。
今、言わなければ…。
心臓が破裂しそうなほどに鼓動を立てる。
震える薄紅色の口唇が、小さくたどたどしく、しかし明瞭に言葉を刻む。
「…私…。
…千晴お兄ちゃまと結婚…できません…」
千晴の脚が止まった。
「…今…なんて言ったの…?」
「千晴お兄ちゃまと、結婚できません。
…私…千晴お兄ちゃま以外に…好きなひとがいるの…。
…だから、このまま婚約式を挙げるわけにはいきません」
千晴の鳶色の瞳が信じられないように大きく見開かれた。
千晴が静かに振り返る。
…美しい彫像のような美貌が柔かに微笑んでいる。
大好きな…大好きな千晴の笑顔だ。
昔からずっと憧れて、慕っていた、美しい千晴の貌だ。
…あの麗らかな春の日…。
色鮮やかなアンジェラの花の下、紗耶を助け、微笑みかけてくれた千晴…。
今でも大好きだ。
大好きなのだ。
…けれど…。
「…千晴お兄ちゃま…。
…あの…私…私…」
「どうしたの?紗耶ちゃん」
やや怪訝そうにしながら、千晴が紗耶に向き直り、戻ってくる。
…言わなければ…。
今、言わなければ…。
心臓が破裂しそうなほどに鼓動を立てる。
震える薄紅色の口唇が、小さくたどたどしく、しかし明瞭に言葉を刻む。
「…私…。
…千晴お兄ちゃまと結婚…できません…」
千晴の脚が止まった。
「…今…なんて言ったの…?」
「千晴お兄ちゃまと、結婚できません。
…私…千晴お兄ちゃま以外に…好きなひとがいるの…。
…だから、このまま婚約式を挙げるわけにはいきません」
千晴の鳶色の瞳が信じられないように大きく見開かれた。

