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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…千晴…お兄ちゃま…」
「…君は僕のものなんだよ…。
昔から…これからも…ずっとだ…!」
大きな手で顎を掴まれ、荒々しく口唇を奪われる。
…いつも優しく慰るような甘いキスを与えてくれていた千晴とは思えない。
憤怒の感情をそのままぶつけるような、乱暴な口付けだった。
「…い…いや…はなし…て…」
紗耶は必死で千晴の胸を押しやる。
その手を捕らえられ、子どもを宥めるように囁く。
「なぜ嫌がるの?
ずっと僕が好きだと言っていたじゃない?
僕の花嫁になるって言っていたじゃない?
僕が初恋なんでしょう?
どうしたの?急に…。
そんな、俗っぽい軽薄な女の子みたいなことを言い出して…。
分かっているでしょう?紗耶ちゃん。
僕は紗耶ちゃんの運命のひとなんだよ。
…紗耶ちゃんは温室育ちの純粋培養の穢れない綺麗な薔薇だ。
初めて外に出て、知らないタイプの男に出会い、それを恋だと勘違いしているんだよ。
君は今、麻疹のようなまやかしの恋の熱に冒されているだけだ。
そんなものはすぐに冷める。
…ねえ、いい子だから僕の言うことを聞いて。
そうすれば、紗耶ちゃんは傷つくことはないんだから。
ずっと僕の腕の中で幸せでいられるんだから。
…さあ、僕だけを見て…紗耶ちゃん…。
…僕を…愛しているだろう?」
美しい鳶色の瞳が充血し、紗耶を凝視している。
酷くプライドを傷つけられた男の貌だ。
…紗耶を見ているようで、見てはいない。
…こんなお兄ちゃまは知らない…。
こんな…無理矢理に愛を強要するようなひとは、私の知っているお兄ちゃまじゃない…!
「嫌…!離して…!」
紗耶は渾身の力を振り絞り、千晴をつきとばした。
思わぬ力で拒絶され、千晴は驚きに動きを止めた。
「…紗耶ちゃん…」
紗耶は背を壁につけ、震えながら…けれどはっきりと言い放つ。
「…私…私はお兄ちゃまの思い通りになるお人形じゃないわ。
ましてや、温室にだけ咲く薔薇じゃない。
…私はちゃんと意思を持った女の子よ…。
私は私の意思で…自分から恋をしたの。
一生、温室の庭にいて、何も知らないまま過ごすより、傷ついてもいい。
…好きな人に好きと言いたいの…!
…好きな人に逢いに行きたいの…!」
「…紗耶…ちゃん…」
茫然と立ち竦む千晴の脇をすり抜け、重い扉を押し開ける。
そうして紗耶は、振り返ることなく部屋から駆け出した。
「…君は僕のものなんだよ…。
昔から…これからも…ずっとだ…!」
大きな手で顎を掴まれ、荒々しく口唇を奪われる。
…いつも優しく慰るような甘いキスを与えてくれていた千晴とは思えない。
憤怒の感情をそのままぶつけるような、乱暴な口付けだった。
「…い…いや…はなし…て…」
紗耶は必死で千晴の胸を押しやる。
その手を捕らえられ、子どもを宥めるように囁く。
「なぜ嫌がるの?
ずっと僕が好きだと言っていたじゃない?
僕の花嫁になるって言っていたじゃない?
僕が初恋なんでしょう?
どうしたの?急に…。
そんな、俗っぽい軽薄な女の子みたいなことを言い出して…。
分かっているでしょう?紗耶ちゃん。
僕は紗耶ちゃんの運命のひとなんだよ。
…紗耶ちゃんは温室育ちの純粋培養の穢れない綺麗な薔薇だ。
初めて外に出て、知らないタイプの男に出会い、それを恋だと勘違いしているんだよ。
君は今、麻疹のようなまやかしの恋の熱に冒されているだけだ。
そんなものはすぐに冷める。
…ねえ、いい子だから僕の言うことを聞いて。
そうすれば、紗耶ちゃんは傷つくことはないんだから。
ずっと僕の腕の中で幸せでいられるんだから。
…さあ、僕だけを見て…紗耶ちゃん…。
…僕を…愛しているだろう?」
美しい鳶色の瞳が充血し、紗耶を凝視している。
酷くプライドを傷つけられた男の貌だ。
…紗耶を見ているようで、見てはいない。
…こんなお兄ちゃまは知らない…。
こんな…無理矢理に愛を強要するようなひとは、私の知っているお兄ちゃまじゃない…!
「嫌…!離して…!」
紗耶は渾身の力を振り絞り、千晴をつきとばした。
思わぬ力で拒絶され、千晴は驚きに動きを止めた。
「…紗耶ちゃん…」
紗耶は背を壁につけ、震えながら…けれどはっきりと言い放つ。
「…私…私はお兄ちゃまの思い通りになるお人形じゃないわ。
ましてや、温室にだけ咲く薔薇じゃない。
…私はちゃんと意思を持った女の子よ…。
私は私の意思で…自分から恋をしたの。
一生、温室の庭にいて、何も知らないまま過ごすより、傷ついてもいい。
…好きな人に好きと言いたいの…!
…好きな人に逢いに行きたいの…!」
「…紗耶…ちゃん…」
茫然と立ち竦む千晴の脇をすり抜け、重い扉を押し開ける。
そうして紗耶は、振り返ることなく部屋から駆け出した。

