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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
千晴の端正な靴音が、水を打ったように静まり返る大広間に響き渡る。

…千晴は、真っ直ぐに紗耶の方…最前列に向かって歩いてきた。

…千晴お兄ちゃま…まさか…まさかお母様にプロポーズなさるおつもりなのではないかしら…。

心臓が煩いほどに音を立てる。
紫織の様子を眼の端で伺うと、彼女は微動だにせずに、姿勢を正して前を向いていた。
…表情は、窺い知ることはできない。

靴音が、紗耶の前で止まった…。

…やっぱり…!
千晴お兄ちゃまは、お母様に…!
でも、どうするおつもりなのかしら。
お父様がここにいらっしゃるのに…。
…もし…お母様がプロポーズをお受けになったら…お父様がお可哀想…!

小さな胸が潰れそうに痛み、紗耶は思わず俯いた。

…と、その時…。
ふわりと妙なるダマスクローズの薫りが鼻先を掠めた。
…同時に紗耶の前に、千晴がしなやかに跪いた。
そうして、彼は手にしたコンテ・ド・シャンボールを優美な仕草で…優しい声とともに差し出したのだ。

「…紗耶ちゃん。
僕の花嫁になっていただけますか?」

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