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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…お若い紗耶さんにはお好みじゃないかも知れないけれど、遠慮なく着てね」
澄佳がクローゼットから出してくれた生成りのブラウスやスモーキーピンクのニット、瑠璃色のスカートはどれも素材や仕立てが良く、さりげなく洒落たものばかりだった。
サイズも華奢な紗耶にはちょうど合うものだ。
「ありがとうございます。
すみません。お借りいたします」
…本当に助かったわ…。
紗耶はほっと息を吐いた。
自分でしたこととはいえ、引き千切られたドレスではどこにも行けない…。
ウォーキングクローゼットの小部屋を借り着替えを済ませて、部屋に戻る。
…広い夫婦の寝室の窓縁には、真新しい白いベビーベッドが置かれていた。
そっと近づき覗き込む。
紗耶は思わず眼を見張った。
「…可愛い…」
…さっきまで澄佳の腕の中で眠っていた赤ん坊は、すやすやと寝息を立てていた。
「何ヶ月ですか?」
小さな声で尋ねると、澄佳がにこやかに微笑みながら近寄ってきた。
「3ヶ月になったばかり…。
ようやく首が座って、少しずつ楽になってきたかしら。
まだまだ夜中に3時間おきに授乳しなくてはならないから、忙しいけれどね」
「そうなんですね…。
でも、すごく可愛い…!」
ベビーベッドの傍らにしゃがみ込み、赤ん坊…類を見つめる。
…甘い乳の香りがしみじみと…微かに切なく胸に温かく染み入る。
…お母様の赤ちゃんも…産まれたらこんな風かしら…。
今頃、母は紗耶の失踪を知らされているだろう。
どれほど驚き、ショックを受けているだろうか。
…お母様…。ごめんなさい…。
初めて、胸が苦しいほど痛んだ。
「赤ちゃんが好き?」
澄佳の問いかけに、紗耶は振り返り頷いた。
「大好きです。
赤ちゃんも子どもも大好き。
赤ちゃんは一日中見ていても見飽きないんです」
「…そう…」
澄佳は優しい微笑みのまま、静かな中に凛とした口調で続けた。
「…でも、紗耶さんと藤木先生との間に赤ちゃんが授かることは難しいかも知れないわね」
紗耶ははっとして長い睫毛を震わせ、改めて澄佳を見つめた。
澄佳がクローゼットから出してくれた生成りのブラウスやスモーキーピンクのニット、瑠璃色のスカートはどれも素材や仕立てが良く、さりげなく洒落たものばかりだった。
サイズも華奢な紗耶にはちょうど合うものだ。
「ありがとうございます。
すみません。お借りいたします」
…本当に助かったわ…。
紗耶はほっと息を吐いた。
自分でしたこととはいえ、引き千切られたドレスではどこにも行けない…。
ウォーキングクローゼットの小部屋を借り着替えを済ませて、部屋に戻る。
…広い夫婦の寝室の窓縁には、真新しい白いベビーベッドが置かれていた。
そっと近づき覗き込む。
紗耶は思わず眼を見張った。
「…可愛い…」
…さっきまで澄佳の腕の中で眠っていた赤ん坊は、すやすやと寝息を立てていた。
「何ヶ月ですか?」
小さな声で尋ねると、澄佳がにこやかに微笑みながら近寄ってきた。
「3ヶ月になったばかり…。
ようやく首が座って、少しずつ楽になってきたかしら。
まだまだ夜中に3時間おきに授乳しなくてはならないから、忙しいけれどね」
「そうなんですね…。
でも、すごく可愛い…!」
ベビーベッドの傍らにしゃがみ込み、赤ん坊…類を見つめる。
…甘い乳の香りがしみじみと…微かに切なく胸に温かく染み入る。
…お母様の赤ちゃんも…産まれたらこんな風かしら…。
今頃、母は紗耶の失踪を知らされているだろう。
どれほど驚き、ショックを受けているだろうか。
…お母様…。ごめんなさい…。
初めて、胸が苦しいほど痛んだ。
「赤ちゃんが好き?」
澄佳の問いかけに、紗耶は振り返り頷いた。
「大好きです。
赤ちゃんも子どもも大好き。
赤ちゃんは一日中見ていても見飽きないんです」
「…そう…」
澄佳は優しい微笑みのまま、静かな中に凛とした口調で続けた。
「…でも、紗耶さんと藤木先生との間に赤ちゃんが授かることは難しいかも知れないわね」
紗耶ははっとして長い睫毛を震わせ、改めて澄佳を見つめた。

