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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
暫く、紗耶は押し黙った。
澄佳に言われたことを頭の中で反芻し、噛み締める。
澄佳は自分のために、敢えて言いにくいことを言ってくれていることも理解できた。
ただひたすらに盲目的に恋に突っ走って来た紗耶に、現実を教えようとしてくれたのだろう。

…だから、紗耶も正直な気持ちを打ち明ける。

「…私、実はまだよく分かりません。
結婚とか、子どもとか…。
考えてもいませんでした。
それは私がまだ未熟で幼くて愚かで世間知らずだからだと思います。
分かっています。
…けれど、私は藤木先生と一緒にいたい。
傍にいたい。ずっと…ずっと…。
この想いは、今の私の紛れもない真実なんです」

澄佳が長い睫毛を瞬かせ…小さく息を吐いた。

「…そう…。
そうよね…。
恋はめちゃくちゃなものだものね。
冷静になんてなれない。
自分の中から溢れ出す、マグマのような熱い想いに突き動かされて、突拍子もないことをしてしまう…。
…それが恋なのよね…」

澄佳はどこか遠く…ここではない、どこか彼方を見遣るような切なげな眼差しをした。

「…澄佳さん…?」
不思議そうに尋ねる。
澄佳はふっと、秋の儚げな薔薇が揺れるように微笑んだ。

「…昔ね…。
昔、私もそんな恋をしたことがあるなあ…て、ふと思い出したの…。
たくさんのひとを悲しませ、困らせて…それでも戻りたくはなかった…。
その人以外、見えなかった…。見たくなかった…。
そんな…むこうみずな恋をね…」

…懐かしいわ…。

澄佳はその恋を愛おしげに思い返すかのように告げた。

…きっと、その相手は清瀧ではないのだろう。

もうとうの昔に決別した…決して幸せではなかった哀しい恋…。
そんな恋の話を、澄佳は紗耶にしてくれたのだ。

紗耶は澄佳の思いに応えるように、心を決めた。

「私、後悔はしません。
どんなことになっても…。何もかも失っても…。
だから今は、この恋を貫きたいのです」

「…紗耶さん…」

澄佳はもう反対はしなかった。

その白く嫋やかな手を紗耶の髪に伸ばして、コンテ・ドゥ・シャンポールの花飾りを優しく直し、囁いた。

「…紗耶さんの行く先に、幸いがありますように…」
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