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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…先生…。
私…先生にすごく迷惑をかけているわね…」
…深い深い森に咲く百合とひんやりした苔の薫りに抱かれて、正直な気持ちを吐露する。

…自分が藤木を好きにならなければ…婚約式を放り出して逃げ出さなければ…藤木は清瀧に非難の眼差しで見られることもなかったのだ。

…千晴は…きっと怒っているだろう。
その矢面に、藤木を立たせてしまうのだ。
もっと…もっと大変なことになるかもしれない。
…ただ、自分のせいで…。
むこうみずな自分のせいで…。

「…大丈夫…。
君は悪くない」
紗耶を抱く腕に力が篭った。

そうして優しく慰撫するように、背中を撫でられる。

「…僕は君に感謝しなくてはならない」
「…感謝?」
意外な言葉に、紗耶は思わず藤木の胸から貌を上げる。
…と、驚くほど近くから熱い眼差しで見つめられ、紗耶の胸は大きな鼓動を立てた。

「そう。感謝だ。
…僕はね、もう二度と恋することはないと思っていた。
恋はもう遠い遠い過去のもので、自分とは無縁の美しくも儚い夢のようなものだと思っていた。
あのときめきや、高揚感や、胸が締め付けられるような切ない想いを、もう二度とすることはないのだろうと諦めていた」

「…先生…」

思い切って、微かに苦しい気持ちを口にする。
「…そんなに、お母様がお好きだったのね…」

その言葉に、榛色の瞳がふっと微笑った。
「…そうだね…。
でも、それだけじゃない。
…僕はね、君を初めて見た時に、まるで魂を掴まれたみたいに茫然としたんだ。
…こんなに可愛いらしくて清らかで…まるで天使みたいな女の子がこの世に存在するのか…て。
まるで信じられなかったよ。
…それからは…苦しいくらいに君を好きになってしまった。
紫織の娘だからじゃない。
君だから…紗耶だから好きになったんだ…。
…君のお父様くらいの歳なのに…。
なんて愚かしい…。
…けれど、その愚かしさこそが恋なのだと気づいて…ああ、僕はまだ恋することが出来るのだと、君に感謝したんだよ…」

「…先生…」
溢れ出る涙を、藤木はその熱い唇で吸い取った。

「…泣かないで…紗耶…」

「…先…生…」

…そうしてそのまま、優しく…甘く…壊れ物に触れるように、男は初めての口づけを紗耶に与えたのだ…。

「…愛している…」

…その言葉は、紗耶の甘く濡れた舌の上で、柔らかく融けていった…。
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