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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「少し海辺を歩こうか」
藤木に笑顔で提案され紗耶は嬉しくなり、すぐさま頷いた。
澄佳が一揃い貸してくれた洋服類が入った紙袋には真新しいサンダルもあった。

…中には、どこで調達したのか新品の純白の絹の下着や、白綸子の寝巻きに真珠色の三尺帯まで入っており、紗耶の頬を赤らめさせた。

『今夜はここに一緒に泊まろう。
晩御飯は近くの知り合いの民宿で特別に食べさせてもらえることになった。
…楽しみにしていて』
そう優しく頬を撫でられた。

…泊まる…のその先を、知らぬほど紗耶はもう子どもではない。
婚約者の千晴がいるのに、ほかの男性と夜を共にしたら…もう、千晴は許さないだろう。

…けれど、その方が良いと、紗耶は思った。
もう二度と元には戻れない様な関係になってしまえば、千晴は自分を憎み、愛想を尽かすだろう。
哀しまれるより、憎まれるほうがずっとましだ。
…すごく、身勝手かもしれないけれど…。


玄関先、白いサンダルに脚を通した紗耶を眩しげに見つめながら
「さあ、おいで」
藤木が大きな美しい手を差し出す。

紗耶はおずおずと手を伸ばし、ぎこちなく握りしめた。

…その手を、藤木は強く握り返した。

「…君に見せたいものがある…」

紗耶は長い睫毛を瞬いた。

「…何ですか…?」

藤木が紗耶の手を引き寄せた。
そうして、大切な秘密を告白するかのようにそっと告げる。

「…星逢いの灯台だ…」





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