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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…気がつくと若者は白い砂浜に打ち上げられていました。
…周りを見渡すと、そこは見慣れた海辺…故郷の漁村でした。
若者は心底ほっとしました。
…急いで娘に会いに行かなくては…。
船が難破し、自分が打ち上げられるまで何日経っているのだろうか。
娘はどれほど心配しているだろう…!
若者ははやる気持ちを抑えて娘の家に急ぎました。
娘の家の前に着くと、娘が庭先に出て海を眺めてぼんやりとしていました。
大層哀しげな眼差しはおそらく、若者を案じてのことに違いありません。
若者は娘の名を呼び、駆け寄りました。
『俺は無事だよ!
今帰ったよ!』
しかし、娘は怪訝そうな貌をして、若者を見つめるだけでした。
『俺だよ!
船が嵐に巻き込まれ難破してしまったんだ。
けれどようやく帰ってきたよ。
心配していただろう?』
娘は益々気味悪そうな表情をすると、こわごわと尋ねました。
『…失礼ですが、どちら様ですか?
お爺さん…』
若者は焦りながら、娘の手を取りました。
『何を言っているんだ。
俺だよ。お前の恋人じゃないか』
娘は穢らわしいものに触れたかのように美しい貌を引き攣らせ、邪険に手を振り払いました。
『私、貴方なんて知りません!
私の恋人は貴方みたいな醜いお爺さんじゃないわ!
出て行って!』
そう叫ぶと、家の中に逃げ帰ってしまったのです。
…訳が分からない若者は、娘を追いかけようと手を伸ばし…しかしその我が手を見て愕然としました。
『…こ、これは…誰の手なんだ…?』
…震えるその手には、無数の皺と滲みが覆われ、枯れ木の様に痩せ衰えていたのでした…」
…周りを見渡すと、そこは見慣れた海辺…故郷の漁村でした。
若者は心底ほっとしました。
…急いで娘に会いに行かなくては…。
船が難破し、自分が打ち上げられるまで何日経っているのだろうか。
娘はどれほど心配しているだろう…!
若者ははやる気持ちを抑えて娘の家に急ぎました。
娘の家の前に着くと、娘が庭先に出て海を眺めてぼんやりとしていました。
大層哀しげな眼差しはおそらく、若者を案じてのことに違いありません。
若者は娘の名を呼び、駆け寄りました。
『俺は無事だよ!
今帰ったよ!』
しかし、娘は怪訝そうな貌をして、若者を見つめるだけでした。
『俺だよ!
船が嵐に巻き込まれ難破してしまったんだ。
けれどようやく帰ってきたよ。
心配していただろう?』
娘は益々気味悪そうな表情をすると、こわごわと尋ねました。
『…失礼ですが、どちら様ですか?
お爺さん…』
若者は焦りながら、娘の手を取りました。
『何を言っているんだ。
俺だよ。お前の恋人じゃないか』
娘は穢らわしいものに触れたかのように美しい貌を引き攣らせ、邪険に手を振り払いました。
『私、貴方なんて知りません!
私の恋人は貴方みたいな醜いお爺さんじゃないわ!
出て行って!』
そう叫ぶと、家の中に逃げ帰ってしまったのです。
…訳が分からない若者は、娘を追いかけようと手を伸ばし…しかしその我が手を見て愕然としました。
『…こ、これは…誰の手なんだ…?』
…震えるその手には、無数の皺と滲みが覆われ、枯れ木の様に痩せ衰えていたのでした…」

