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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…哀しいお話だわ…」
思わず物語に引き込まれた紗耶は涙を流しながら藤木を見上げた。
「可哀想だわ。二人とも…」
「…泣かせてしまったね…。
紗耶の可愛い貌が曇っている…」
…ごめんね…
と、藤木は優しく紗耶の涙を拭った。

「…でも私はもし先生が仙人のような老人になったとしても、分かるわ。
決して間違えたりしないわ。
…ううん。
私は先生がおじいさんになっても愛し続けるわ」
紗耶はきっぱりと言い放った。

藤木が榛色の瞳を細め、穏やかに微笑った。
「…それは…どうかな…。
とても、難しい問題だ…」

紗耶は形の良い眉を顰め、むっとした。
「ううん。愛するわ。
ずっと変わらないわ。
永遠に先生が好きだわ。
なぜ、そんなことを言うの?」

藤木は愛おしげに紗耶の髪を梳き上げる。
「…変わらないものは、この世にはないからさ」

…お母様のことを言っているのかしら…。
紗耶はどきりとした。

…お母様は結局、心変わりをしてお父様のもとに留まり、新しい命を授かった…。

「先生…!」

「けれど、だからこそ、人生は…世界は美しいのだよ」

藤木の榛色の瞳には限りない優しさと慈しみがあった。
…そこには諦観に似た静寂の色が幽かに漂っていたのだ。

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