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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「いらっしゃいませ。
…わあ!こんな可愛いお嬢さんとイケオジの駆け落ちカップルなんて、まるで映画みたい!」
民宿「三島」の食堂に入るなり、結城紬に白い割烹着姿の美人の若女将らしき人物に明るく声を掛けられ、紗耶は思わずドギマギした。
「おい、瑠璃子。
お客様にいきなり失礼なこと言うんじゃねえ」
厨房の中で魚を捌いていたブロンズ色に綺麗に日焼けした筋肉隆々の逞しい男はどうやら若女将の主人らしい。
真っ白なTシャツにデニムの前掛け姿なのがよく似合っている。
瑠璃子と呼ばれたまだうら若い女将は肩をすくめ、素直に謝った。
「ごめんなさい。
澄佳さんと柊ちゃんにお二人のお話を聞いてお会いするの楽しみにしていたの。
だって駆け落ちなんてめっちゃドラマチックじゃない!
…いいなあ。あたしも涼ちゃんと一回駆け落ちしてみたかったなあ」
「瑠璃子!お喋りがすぎるぞ。
早く席にご案内しろ。
…すみません。まだまだ未熟で粗相が多くて…」
厨房の若主人は瑠璃子を嗜め、頭を下げた。
日焼けした雄々しい貌には苦笑いが浮かんでいる。
…叱りながらも若くて屈託のない妻が可愛くて仕方がないのが滲み出ていた。
「いいえ。こちらこそ、いきなり食事をお願いしまして失礼いたしました」
藤木は柔かに笑いながら無礼を詫びた。
「…実家は電気と水道は通っているんですが、ガスを止めたままで…。
何年も空き家だったものですから…」
「とんでもありません。
藤木さんとこのお祖父さん先生にはこの町のみんなは散々お世話になったんです。
俺のことも取り上げてもらったとお袋が言ってました。
…先生はいつ急患で呼ばれても嫌な顔ひとつしないで診てくださったって、みんな未だに感謝してますよ」
どうやら、藤木と若主人は昔からの知り合いのようだった。
「そう言っていただくと…祖父もきっと天国で喜んでいることでしょう」
藤木はしみじみと答え、紗耶に紹介した。
「紗耶、こちらは三島涼太さんだ。
ここの民宿を経営されていて、それから漁師さんでもあるんだよ」
紗耶は眼を見張った。
東京育ちの紗耶は漁師に会うのは初めてだ。
「漁師さん?
すごいわ…!」
思わず出た呟きに、瑠璃子が大きな瞳を輝かせ人懐っこく笑いかけてきた。
「ねね、すごいでしょ?
涼ちゃんはね、カッコよくて逞しくてなんでもできる私の海賊なの」
…わあ!こんな可愛いお嬢さんとイケオジの駆け落ちカップルなんて、まるで映画みたい!」
民宿「三島」の食堂に入るなり、結城紬に白い割烹着姿の美人の若女将らしき人物に明るく声を掛けられ、紗耶は思わずドギマギした。
「おい、瑠璃子。
お客様にいきなり失礼なこと言うんじゃねえ」
厨房の中で魚を捌いていたブロンズ色に綺麗に日焼けした筋肉隆々の逞しい男はどうやら若女将の主人らしい。
真っ白なTシャツにデニムの前掛け姿なのがよく似合っている。
瑠璃子と呼ばれたまだうら若い女将は肩をすくめ、素直に謝った。
「ごめんなさい。
澄佳さんと柊ちゃんにお二人のお話を聞いてお会いするの楽しみにしていたの。
だって駆け落ちなんてめっちゃドラマチックじゃない!
…いいなあ。あたしも涼ちゃんと一回駆け落ちしてみたかったなあ」
「瑠璃子!お喋りがすぎるぞ。
早く席にご案内しろ。
…すみません。まだまだ未熟で粗相が多くて…」
厨房の若主人は瑠璃子を嗜め、頭を下げた。
日焼けした雄々しい貌には苦笑いが浮かんでいる。
…叱りながらも若くて屈託のない妻が可愛くて仕方がないのが滲み出ていた。
「いいえ。こちらこそ、いきなり食事をお願いしまして失礼いたしました」
藤木は柔かに笑いながら無礼を詫びた。
「…実家は電気と水道は通っているんですが、ガスを止めたままで…。
何年も空き家だったものですから…」
「とんでもありません。
藤木さんとこのお祖父さん先生にはこの町のみんなは散々お世話になったんです。
俺のことも取り上げてもらったとお袋が言ってました。
…先生はいつ急患で呼ばれても嫌な顔ひとつしないで診てくださったって、みんな未だに感謝してますよ」
どうやら、藤木と若主人は昔からの知り合いのようだった。
「そう言っていただくと…祖父もきっと天国で喜んでいることでしょう」
藤木はしみじみと答え、紗耶に紹介した。
「紗耶、こちらは三島涼太さんだ。
ここの民宿を経営されていて、それから漁師さんでもあるんだよ」
紗耶は眼を見張った。
東京育ちの紗耶は漁師に会うのは初めてだ。
「漁師さん?
すごいわ…!」
思わず出た呟きに、瑠璃子が大きな瞳を輝かせ人懐っこく笑いかけてきた。
「ねね、すごいでしょ?
涼ちゃんはね、カッコよくて逞しくてなんでもできる私の海賊なの」

