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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

…藤木は一階の和室の縁側にいた。
縁側の前には広々とした日本庭園が広がっている。
かつては鯉などを飼っていたのだろう。
緩やかな円形の池もさっき見つけた。
古びた石灯籠や月見台は、西洋家屋に住み慣れた紗耶には物珍しかった。
生垣の前にはもうほかには民家はなく、この小高い丘陵からは内房の海原が臨めるのだ。
…もっとも今は夜なので紺瑠璃色のそれは夜空に溶け込み、はっきりとは見えないはずだ。
けれど藤木は、濃灰色の小千谷紬の着物の背中をこちらに見せ、海を眺めているようだった。
その背中は、息を呑むほどに近寄り難いような孤独を滲ませていて、紗耶は思わず声を掛けそびれた。
紗耶の気配に気づいたのか、藤木がゆっくりと振り返る。
「…紗耶…。
上がったの?
ちゃんと温まった?」
優しい声と榛色の眼差しはそのままで、ほっとした。
黙って頷く。
紗耶の硬い表情を見て何かを察したのか男が柔らかく微笑み、手招きをした。
「…こちらにおいで。紗耶…」
縁側の前には広々とした日本庭園が広がっている。
かつては鯉などを飼っていたのだろう。
緩やかな円形の池もさっき見つけた。
古びた石灯籠や月見台は、西洋家屋に住み慣れた紗耶には物珍しかった。
生垣の前にはもうほかには民家はなく、この小高い丘陵からは内房の海原が臨めるのだ。
…もっとも今は夜なので紺瑠璃色のそれは夜空に溶け込み、はっきりとは見えないはずだ。
けれど藤木は、濃灰色の小千谷紬の着物の背中をこちらに見せ、海を眺めているようだった。
その背中は、息を呑むほどに近寄り難いような孤独を滲ませていて、紗耶は思わず声を掛けそびれた。
紗耶の気配に気づいたのか、藤木がゆっくりと振り返る。
「…紗耶…。
上がったの?
ちゃんと温まった?」
優しい声と榛色の眼差しはそのままで、ほっとした。
黙って頷く。
紗耶の硬い表情を見て何かを察したのか男が柔らかく微笑み、手招きをした。
「…こちらにおいで。紗耶…」

