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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…祖父母は優しかったし、僕をとても可愛がってくれた。
経済的にも満たされていたし、何ひとつ不自由はなかった。
祖父はここでとても尊敬される医者だったから皆、僕のことも尊重してくれた。
複雑な家の子…と陰口を叩かれることもなかった。
…けれど、やっぱり小さな僕は寂しかったんだね…。
祖父母は急な往診があると夜中でも僕を置いて出ていかなくてはならなかった。

『芳人ちゃん、ええ子にして待っとってね。
患者さん診たらすぐに戻ってくるからねえ』
助産婦もしていた祖母はそう声をかけて、僕から離れてゆく…。
泣いたら祖母を困らせる。
祖父母は睡眠時間を削っても、遠くまで患者さんを診察しに行くのだ。
寂しいなんて、わがままだ。甘ったれだ。
…そう言い聞かせて、いつも笑っていた。
『お祖母ちゃん、大丈夫だよ。
僕はひとりで寝られるよ』
…てね…」

「…先生…」
紗耶は藤木の手を握りしめる。
ずっとずっと年上のひとなのに、まるで健気で寂しげな少年のような気がしたのだ。

「…そうして僕はいつもひとり、ここに布団を持ってきて寝ていたんだ。
…ここにいると、ずっと海鳴りが聴こえてね…。
それはまるで武骨で温かな子守唄のように思えたんだ…。
その子守唄に包まれて、僕はいつしか安心して眠ることができた…」

藤木が照れ臭そうに笑った。

「…僕はそんな、情けない子どもだったんだ…」

紗耶は小さく微笑んだ。
「情けなくなんてないわ。
…可愛い…。先生…」

そっと、男の頰にキスをする。

「…私が居たら、先生に本当の子守唄を唄ってあげられたのに…」

…そうして、このひとの寂しい心ごと、抱きしめてあげられたのに…。
それが、悔しい。切ない。

「…紗耶…」

男の声が、微かに震えた。
そうして、そのまま胸深く抱き竦められる。

…藤木の鼓動は、遠く鳴り響く海鳴りのようだった…。
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