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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
「…紗耶ちゃんは、とても優しくて控えめで慎み深く、現代の女性にはない美徳をたくさん持っています。
薔薇を愛でる繊細な感性もそうです。
僕は密かに紗耶ちゃんの成長を見守ってきました。
一時の思いつきや気まぐれではありません。
僕の花嫁は紗耶ちゃんしかいません。
政彦兄さん、どうか僕に紗耶ちゃんにプロポーズすることをお許しください」
千晴は静かに…けれど情熱を込めて語ると折り目正しく…さながら美しいお伽話の王子のように胸に手を当てて、お辞儀をした。
政彦は困り果てたようにしばらく考え込んでいたが、やがて傍の紫織を見た。
「…紫織、君はどう思う?」
紗耶は恐る恐る紫織を見上げた。
紫織は、息を飲むほどに美しく嫋やかに整った貌に微かな微笑を浮かべ口を開いた。
「…これは紗耶と千晴さんの問題です。
紗耶に決めさせましょう」
紗耶は睫毛を震わせ、紫織を見上げた。
「…お母様…」
紫織の切れ長の美しい瞳が、紗耶にそっと語りかける。
…『初恋を、諦めてはだめよ…』
紫織の優しい…どこか艶めいた囁きが鼓膜を掠める。
…お母様は…私が千晴お兄ちゃまに恋しているのをご存じだから…?
親族の注目が一斉に紗耶に注がれる。
…何より、千晴が熱の籠った情感漂う眼差しで紗耶を見つめ続けていた。
「…紗耶ちゃん。
僕の花嫁になってくれませんか?」
…密かに、お母様を愛していらっしゃる千晴お兄ちゃま…
でも、私にプロポーズしてくださったということは…
もしかして…
…私を…愛してくださっているのではないかしら…。
胸の奥から微かな甘い期待が湧き上がる。
…もし、千晴お兄ちゃまのお言葉に、希望を持って良いのなら…
…私は…
私は…
…幼い日の薔薇園で…千晴がそのしなやかな手を伸ばして紗耶の宝物のテディベアを取ってくれた、あの美しいアンジェラの蔓薔薇の光景が鮮やかに蘇った。
…私は…
紗耶は、震える薄紅色の唇をゆっくりと開いた。
「…はい、千晴お兄ちゃま…」
薔薇を愛でる繊細な感性もそうです。
僕は密かに紗耶ちゃんの成長を見守ってきました。
一時の思いつきや気まぐれではありません。
僕の花嫁は紗耶ちゃんしかいません。
政彦兄さん、どうか僕に紗耶ちゃんにプロポーズすることをお許しください」
千晴は静かに…けれど情熱を込めて語ると折り目正しく…さながら美しいお伽話の王子のように胸に手を当てて、お辞儀をした。
政彦は困り果てたようにしばらく考え込んでいたが、やがて傍の紫織を見た。
「…紫織、君はどう思う?」
紗耶は恐る恐る紫織を見上げた。
紫織は、息を飲むほどに美しく嫋やかに整った貌に微かな微笑を浮かべ口を開いた。
「…これは紗耶と千晴さんの問題です。
紗耶に決めさせましょう」
紗耶は睫毛を震わせ、紫織を見上げた。
「…お母様…」
紫織の切れ長の美しい瞳が、紗耶にそっと語りかける。
…『初恋を、諦めてはだめよ…』
紫織の優しい…どこか艶めいた囁きが鼓膜を掠める。
…お母様は…私が千晴お兄ちゃまに恋しているのをご存じだから…?
親族の注目が一斉に紗耶に注がれる。
…何より、千晴が熱の籠った情感漂う眼差しで紗耶を見つめ続けていた。
「…紗耶ちゃん。
僕の花嫁になってくれませんか?」
…密かに、お母様を愛していらっしゃる千晴お兄ちゃま…
でも、私にプロポーズしてくださったということは…
もしかして…
…私を…愛してくださっているのではないかしら…。
胸の奥から微かな甘い期待が湧き上がる。
…もし、千晴お兄ちゃまのお言葉に、希望を持って良いのなら…
…私は…
私は…
…幼い日の薔薇園で…千晴がそのしなやかな手を伸ばして紗耶の宝物のテディベアを取ってくれた、あの美しいアンジェラの蔓薔薇の光景が鮮やかに蘇った。
…私は…
紗耶は、震える薄紅色の唇をゆっくりと開いた。
「…はい、千晴お兄ちゃま…」