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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…先生…わたし…」
…このひとに、すべてを捧げる決心をしているのに…。

少し肩透かしを食らったようなもどかしい気持ちが掠め…けれどそんな自分がはしたなく、白い頸を朱に染める。

「…紗耶はいい匂いがするね…。
…柔らかでフレッシュな薔薇の薫りだ…」
髪に貌を埋められ、くすぐったくて肩をすくめる。
「私が育てている薔薇から香油を作ったの。
それをお風呂に入れたり、ハンドクリームやトリートメントに使っているの」

…お母様に教わったの…とは言わないでおこう。

「…そう…。
素敵だね。
…紗耶のオリジナルの薫りだ…」

…そういえば…と、藤木が寝物語をするように静かな口調で語り始めた。

「昔…日本に一時帰国したときに、まるで西洋のお伽噺の舞台のような洋館に迷い込んだことがある…」
「…洋館?」
「うん。その屋敷の壁一面には蔦が覆い尽くされていてね…。
それから、それは見事な薔薇の庭園があった。
…思わず見惚れていると…近くの茂みに小さな女の子が泣きながら蹲っているのが見えたんだ…」

…どこかで見たような…奇妙な既視感に襲われる。

「思わず抱き上げてあやすと、僕にしがみついてきた…。
すぐにその屋敷の家政婦みたいなひとが慌てやってきて、その女の子を引き取っていったけれど…。
…その子と紗耶の薫りが似ていたよ…。
今、思い出した。
…近くの薔薇の薫りが移ったのかな…」

「…そう…」

…どこかで見たような…不思議な感覚…。
なぜなのかしら…。

抱き上げられた腕の温かさ…安堵感…
なぜ、こんなにもはっきりと、自分の記憶のように思い浮かべられるのかしら…。

…なぜ…?

けれど男の胸の中は温かく、頼もしく、その声と手はあまりにも優しくて、紗耶は抗いようもなく、微睡みの世界に少しずつ沈み込んでゆく…。

…ああ…もう…眠くて…何も考えられないわ…。

「…疲れたんだね…。
さあ、もうおやすみ…紗耶…。
…ぐっすり眠りなさい…」

藤木が催眠術を掛けるかのように耳元で囁く。

「…おやすみなさい…先生…。
…朝になったら…聞いて欲しいことが…あるの…」

…その…女の子のこと…
…もしかしたら…その子は…

「…ああ…分かったよ…。
おやすみ、紗耶…」

…愛しているよ…誰よりも…。

その深い愛の言葉は優しい子守唄のように、紗耶を眠りの揺籃へと誘ったのだ…。


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