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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「紫織さん!しっかりしてください!
まだ無理をなさってはいけない。
さあ、こちらに横になって…」

千晴が傍らの長椅子に誘おうとするのを、紫織はひんやりとした白く美しい腕で押し留めた。

「いいえ…いいえ…。
千晴さん。今は私の身体などどうなっても良いのです。
…私のせいで…紗耶が…私の愚かな過去のせいで…。
千晴さん、貴方にも大変なご迷惑をお掛けしてしまいましたわ」
…ごめんなさい…許して…。
混乱した口調で頭を下げる紫織の肩を、千晴が痛ましげに抱きしめる。
「紫織さん…。
落ち着いてください。
お腹の赤ちゃんに触ります。
…さあ、お掛けください」
千晴は紫織を長椅子に強引に座らせた。
…ようやく安定期に入ったばかりの妊婦を…しかも大切な紫織の辛い表情はこれ以上見たくなかったのだ。
紫織は白いゆったりとしたローブのドレスを身に纏っていた。
…とても四十路の妊婦には見えない…まるで頼りなげで儚げな少女のような風情だ。

千晴はその紫織の前に跪き、さながら敬愛する妃に忠誠を誓う騎士のようにその冷たく透き通るように白い手を握りしめた。

「…紫織さん。
僕と紗耶ちゃんの話はもう着いています。
あとは紗耶ちゃんの決断だけなのです」 

「…なんですって?
…それは…どういうことなの?紗耶ちゃん…」
紫織が美しい眉を恐ろしげに顰め、目の前の紗耶を見上げた。





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