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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

…大広間の扉が軋みながら開かれた瞬間、紗耶は驚きに息を呑んだ。
そこには高遠一族のほぼすべての人々が勢揃いし、居並んでいたからだ。
彼らは皆、正装で着席し、紗耶を好奇心…或いはやや軽蔑に近い色に溢れた眼差しで見つめていた。
…辺りには水を打ったような静寂が支配していた。
「何を驚いているのですか?紗耶さん。
皆さんは貴女が千晴さんとの婚約式を中止されたことを、それはそれは心配されてお集まりになられたのですよ」
徳子のハスキーだがよく通る声が、冷ややかに響き渡る。
大広間の正面、一段高い上座に置かれた紫檀の椅子に徳子は、さながら玉座に君臨する女王であるかのように腰掛けていた。
…美しく結い上げた髪は一筋の乱れることなく、また、そのアメジスト色の天鵞絨のドレスは一部の隙もなく着こなされていて、紗耶に言い知れぬ圧迫感を与えた。
大振りの翡翠のイヤリングがきらりと光る。
徳子はその傲慢な冷たい美貌をにこりともさせなかった。
そうして千晴に白い手を差し伸べ、有無を言わさぬ口調で命じたのだ。
「千晴さんはこちらにいらして。
私のお隣にお座りなさい」
そこには高遠一族のほぼすべての人々が勢揃いし、居並んでいたからだ。
彼らは皆、正装で着席し、紗耶を好奇心…或いはやや軽蔑に近い色に溢れた眼差しで見つめていた。
…辺りには水を打ったような静寂が支配していた。
「何を驚いているのですか?紗耶さん。
皆さんは貴女が千晴さんとの婚約式を中止されたことを、それはそれは心配されてお集まりになられたのですよ」
徳子のハスキーだがよく通る声が、冷ややかに響き渡る。
大広間の正面、一段高い上座に置かれた紫檀の椅子に徳子は、さながら玉座に君臨する女王であるかのように腰掛けていた。
…美しく結い上げた髪は一筋の乱れることなく、また、そのアメジスト色の天鵞絨のドレスは一部の隙もなく着こなされていて、紗耶に言い知れぬ圧迫感を与えた。
大振りの翡翠のイヤリングがきらりと光る。
徳子はその傲慢な冷たい美貌をにこりともさせなかった。
そうして千晴に白い手を差し伸べ、有無を言わさぬ口調で命じたのだ。
「千晴さんはこちらにいらして。
私のお隣にお座りなさい」

