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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
広間に居並ぶ人々は騒然となった。

華子が立ち上がり、大袈裟に手を広げ声を上げた。
煌びやかな紅色の京友禅の袖がひらりと舞う。
「何ですって⁈
千晴様の婚約者でありながら他に好きな人が⁈
なんて穢らわしいこと!
やっぱりそうですわ。
紗耶さんは千晴様の御台所には相応しくないのです。
大お祖母様、これでお分かりになったでしょう?」

徳子がきらりと光る冷たい視線をくれながら、華子にぴしゃりと言い放つ。

「私は紗耶に聞いているのです。
貴女は黙っていらっしゃい」

慌てた両親に袖を引かれ、華子は不承不承引き下がる。

「その者は誰ですか?」
落ち着き払った徳子の声に、紗耶は意を決して答える。

「…大学の…先生です…」

徳子はおやおや…と言った風に、彫りの深い瞳を見開いた。
そうして、どこか愉しげにさえ見える表情で唄うように続けた。

「大学の…ねえ…。
…それよりも、紫織さんの昔の恋人と言った方が、分かりやすいのではないかしら?」

…大広間は一瞬にして凍りついたように静まり返った。
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