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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

思わず息を呑む紗耶を、徳子は愉しげに見つめた。
猛禽類のような鋭い眼差しが、一瞬、子どものように輝いた。
「…さてさて…どうしたものかしらねえ」
徳子はゆっくりと立ち上がり、こつこつと杖を鳴らしながら紗耶の前まで近付いた。
…ふふ…と愉快そうに笑いながら
「…親族たちの眼の前で、母親と自分の恋愛を赤裸々に暴かれ…しかもその相手には置き去りにされ…。
その男は貴女に二度と会わないと言い残し、姿を消したそうね。
…もはや充分に罰を受けているような貴女ですけれどね」
皮肉めいた言葉を言い放つ。
親族が再びざわざわと騒めいた。
「まあ!紗耶さん、もう捨てられたの?
…バチが当たったんだわ。
千晴さんを裏切るような真似をするから。
自業自得だわ」
華子が大袈裟に瞳を見開き、嗤った。
…千晴は依然として紫檀の椅子に腰掛け、優雅に長い脚を組んだまま、紗耶を静かに見つめていた。
徳子を取りなそうとする素振りもない。
ただ、その美しい鳶色の瞳は、驚くほどに静謐だった。
『これからどうするか、すべて紗耶ちゃんが決めるんだ』
千晴の言葉が蘇る。
…そう…。
私が…自分で決めなくてはならないのだわ。
私がしでかしたことですもの。
…誰も頼らず…自分でけりをつけなくては…。
紗耶は深呼吸をすると、微かに震える口唇をそっと開いた。
そうして、眼の前に立つ徳子に、はっきりと告げた。
「大お祖母様。
私を…この高遠一族から除籍して下さい」
猛禽類のような鋭い眼差しが、一瞬、子どものように輝いた。
「…さてさて…どうしたものかしらねえ」
徳子はゆっくりと立ち上がり、こつこつと杖を鳴らしながら紗耶の前まで近付いた。
…ふふ…と愉快そうに笑いながら
「…親族たちの眼の前で、母親と自分の恋愛を赤裸々に暴かれ…しかもその相手には置き去りにされ…。
その男は貴女に二度と会わないと言い残し、姿を消したそうね。
…もはや充分に罰を受けているような貴女ですけれどね」
皮肉めいた言葉を言い放つ。
親族が再びざわざわと騒めいた。
「まあ!紗耶さん、もう捨てられたの?
…バチが当たったんだわ。
千晴さんを裏切るような真似をするから。
自業自得だわ」
華子が大袈裟に瞳を見開き、嗤った。
…千晴は依然として紫檀の椅子に腰掛け、優雅に長い脚を組んだまま、紗耶を静かに見つめていた。
徳子を取りなそうとする素振りもない。
ただ、その美しい鳶色の瞳は、驚くほどに静謐だった。
『これからどうするか、すべて紗耶ちゃんが決めるんだ』
千晴の言葉が蘇る。
…そう…。
私が…自分で決めなくてはならないのだわ。
私がしでかしたことですもの。
…誰も頼らず…自分でけりをつけなくては…。
紗耶は深呼吸をすると、微かに震える口唇をそっと開いた。
そうして、眼の前に立つ徳子に、はっきりと告げた。
「大お祖母様。
私を…この高遠一族から除籍して下さい」

