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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
徳子の言葉は、鶴の一声だ。
政彦は漸く…渋々ではあるが、納得したように口を噤んだ。
やや和らいだ空気の中、改めて千晴が紗耶の前に恭しく跪く。
「…紗耶ちゃん、僕のプロポーズを受け入れてくれてありがとう。
…コンテ・ド・シャンボール…この薔薇は、我が高遠家の紋章とも言える薔薇だ。
高遠家の花嫁は、代々この薔薇を髪飾りにして式を挙げる決まりなのだよ。
お祖母様も…そして僕の母も、同じように…ね」
千晴はコンテ・ド・シャンボールの薔薇の茎をしなやかに折る。
そうして紗耶の髪に手を伸ばし、真珠の髪留めを外す。
黒い絹糸のような美しい髪がさらりと肩に溢れ落ちた。
「…千晴…お兄ちゃま…?」
何をされるのかとその瞳を見張る紗耶の耳元に、華やかに艶やかに咲き誇る薔薇の花が飾られた。
…ダマスク香の薫りが、夢のように漂う。
…かつて、千晴に同じようにアンジェラの薔薇を飾られた日のことが不意打ちのように蘇る。
眼の前の千晴が満足げに紗耶を見つめていた。
「…この日のために、温室で大切に育てた薔薇だ。
…紗耶ちゃん、とてもよく似合うよ…」
千晴の手が紗耶の手を取り、敬愛と慈しみのこもった紳士的なキスをその白い甲に与える。
「…これで君は僕のものだ…紗耶…」
…それは、紗耶にしか聞き取れない幽かな囁きであった。
政彦は漸く…渋々ではあるが、納得したように口を噤んだ。
やや和らいだ空気の中、改めて千晴が紗耶の前に恭しく跪く。
「…紗耶ちゃん、僕のプロポーズを受け入れてくれてありがとう。
…コンテ・ド・シャンボール…この薔薇は、我が高遠家の紋章とも言える薔薇だ。
高遠家の花嫁は、代々この薔薇を髪飾りにして式を挙げる決まりなのだよ。
お祖母様も…そして僕の母も、同じように…ね」
千晴はコンテ・ド・シャンボールの薔薇の茎をしなやかに折る。
そうして紗耶の髪に手を伸ばし、真珠の髪留めを外す。
黒い絹糸のような美しい髪がさらりと肩に溢れ落ちた。
「…千晴…お兄ちゃま…?」
何をされるのかとその瞳を見張る紗耶の耳元に、華やかに艶やかに咲き誇る薔薇の花が飾られた。
…ダマスク香の薫りが、夢のように漂う。
…かつて、千晴に同じようにアンジェラの薔薇を飾られた日のことが不意打ちのように蘇る。
眼の前の千晴が満足げに紗耶を見つめていた。
「…この日のために、温室で大切に育てた薔薇だ。
…紗耶ちゃん、とてもよく似合うよ…」
千晴の手が紗耶の手を取り、敬愛と慈しみのこもった紳士的なキスをその白い甲に与える。
「…これで君は僕のものだ…紗耶…」
…それは、紗耶にしか聞き取れない幽かな囁きであった。