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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
ぐったりとした紫織を政彦に委ねると、千晴はゆっくりと沙耶に近づいた。

まだがくがくと足を震わせる紗耶に、包み込むように微笑みかけた。
「大丈夫?怖かったよね」
…それはあの、アンジェラの蔓薔薇の前で佇んでいた…あの日の千晴の微笑みと同じだった。

「紗耶ちゃん。立派だったね。
君は本当に強くなったんだね」
…愛の力かな…
少し寂しげに呟いた。

「千晴お兄ちゃま…」

千晴が、その美しい鳶色の瞳でじっと紗耶を見つめた。
「少しでも紗耶ちゃんが迷う素振りを見せたら、力尽くでも僕の元に引き留めるつもりだった。
…でも、違った…。
君の決意は本物だった。
だから、見守っていたんだ」

…君が大人になって、僕から旅立とうとしているところをね…。

そうだった。
千晴は、いつだって紗耶を見守ってくれていた。
いつだって紗耶の味方だった。
…美しく優しく温かい…私の初恋の王子様…。

不意に、訳もなく涙が溢れ落ちる。
その涙を、千晴が拭う前に紗耶は自分で少し乱暴に拭った。

…もう、千晴お兄ちゃまを頼ってはならないのだ。

千晴がふわりと微笑んだ。
「後悔は、しないね?」
「はい」
「本当に二宮の家から出ることになっても?
政彦義兄さんは嘘はつかないひとだ」
…自分にも嘘をつかない、他人の嘘も許さない、真っ直ぐな正直な父だ。

…少し、不安になる。
十八歳で、ひとりで生きてゆくことの意味を、紗耶はまだ何も知らない。
その心細さも、辛さも、苦しさも…。 

…でも…
…それでも…

「…大丈夫です。
自分の力で、ひとりで、生きてゆきます」

…ひとりで生きて…

「…彼を、捕まえられるといいね…」
紗耶の心を読むように繋げて、悪戯めいて笑った。

…そうして千晴は、優しい兄が妹にするように、紗耶の額に慈愛を込めてそっとキスを与えた。

「…幸せになりなさい。
僕の大切な愛おしい紗耶ちゃん…」
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