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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…さあ、千晴さん。
もうおゆきなさい。
私ももう寝みます」
徳子に促され千晴は一礼すると、部屋を辞するために踵を返した。
…と、ふと、あることを思い出し、やや悪戯めいたとぼけた口調で切り出した。
「…そう言えば、先ほどのGHQの高官をお祖母様が殺められたというお話ですが…」
徳子が振り返り、その猛禽類のように鋭い眼差しを細めた。
「…私の記憶違いでなければあれは…酔って大お祖父様に絡んで来た高官のカイゼル髭を大お祖母様がその短剣で切り落とし、大層怯えさせた…というものではなかったでしょうか?
…七重は確かその高官を薙刀で叩いて追い払った…という武勇伝を聞いていますが…。
…本当にこの屋敷の庭園に埋められているのですか?」
千晴が神妙に首を傾げると、徳子の傍らに影のように控えていた七重はその無表情な人形のような貌に、微かに狼狽したような色を浮かべ、咳払いをした。
「…記憶にございません」
徳子はその頬に悪戯めいた笑みを浮かべた。
「…さあ、どうだったかしら?
何しろ私は随分長い年月生きて参りましたからね。
多少の思い違いはあるでしょう。
大した問題ではありませんよ」
…少なくとも…
「これで高遠一族の者たちへ久々に引き締めができたのですからね」
そう愉しげに囁くと、こつこつとクリスタルの杖を鳴らしながら、隣室に消えて行ったのだった。
もうおゆきなさい。
私ももう寝みます」
徳子に促され千晴は一礼すると、部屋を辞するために踵を返した。
…と、ふと、あることを思い出し、やや悪戯めいたとぼけた口調で切り出した。
「…そう言えば、先ほどのGHQの高官をお祖母様が殺められたというお話ですが…」
徳子が振り返り、その猛禽類のように鋭い眼差しを細めた。
「…私の記憶違いでなければあれは…酔って大お祖父様に絡んで来た高官のカイゼル髭を大お祖母様がその短剣で切り落とし、大層怯えさせた…というものではなかったでしょうか?
…七重は確かその高官を薙刀で叩いて追い払った…という武勇伝を聞いていますが…。
…本当にこの屋敷の庭園に埋められているのですか?」
千晴が神妙に首を傾げると、徳子の傍らに影のように控えていた七重はその無表情な人形のような貌に、微かに狼狽したような色を浮かべ、咳払いをした。
「…記憶にございません」
徳子はその頬に悪戯めいた笑みを浮かべた。
「…さあ、どうだったかしら?
何しろ私は随分長い年月生きて参りましたからね。
多少の思い違いはあるでしょう。
大した問題ではありませんよ」
…少なくとも…
「これで高遠一族の者たちへ久々に引き締めができたのですからね」
そう愉しげに囁くと、こつこつとクリスタルの杖を鳴らしながら、隣室に消えて行ったのだった。

