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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…紗耶、サンルームで話そう。
…おいで」

奥沢の家に着くなり政彦はそう言って、いつもと変わらぬ穏やかな表情で、紗耶に手を差し伸べた。

政彦は紗耶が大きくなっても、手を繋ぐことを好んだ。
紗耶も父と手を繋ぐことが大好きだった。
父の大きな手はいつも温かく頼もしく、紗耶に安心感と愛を与えてくれたからだ。

「…お父様…」
…けれど今夜は父の手を素直に取ることは憚られた。
自分のしでかしたことの罪深さ、重大さ、
そして…
そのことが、どれだけ父を傷つけたかを考えると、無邪気に手を取ることなど、できなかったのだ。

そんな紗耶の心を察したかのように、政彦は優しい微笑みを深くして、自ら紗耶の手を取った。

「…おいで、紗耶」

…父の手は、やはり温かく大きかった。
そうして、紗耶の心ごと包み込むように、優しくそっと紗耶の手を握りしめてくれたのだ…。
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