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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
南向きの広々としたサンルームは、風通しが良く、冬には暖かな暖房が入り、とても居心地が良い。
小さな頃、身体が弱かった紗耶は、冬は外に出られない日が多かった。
そこで政彦が紗耶の為にリフォームしたこのサンルームで、一日の大半を過ごしていたのだ。

ここで日がな一日を大好きなテディベアのアリスとおままごとしたり、絵本を読んだりお絵描きをしたりしていた。
…天井までの硝子張りの窓からは、美しい花々が咲く前庭や紫織の白いラボがよく見えた。
だから少しも寂しくはなかったし、退屈することもなかった。

休日は政彦が忙しい仕事の合間を縫って、ボードゲームをしてくれたり、本の読み聞かせをしてくれた。
両親と家政婦のテル、それから父方の祖父母以外とは上手く話せない酷く人見知りの紗耶を、政彦は少しも叱ったりはしなかった。

…けれど、ひとはいつか社会に出てコミニュケーションを取らなくてはならないということを、辛抱強く紗耶に優しく言って聞かせた。

『…でも、紗耶、お父ちゃまとお母ちゃまがいてくださればいいのに…。
それからテルさんと柿の木坂のおじいちゃまとおばあちゃま…。
それでいいのに…
紗耶はずうっとここにいたいのに…
どこにも行きたくないのに…』
そう小さく溢す紗耶に政彦は眼を細め、ひょいと膝に抱き上げた。

『…よくお聴き、紗耶。
ひとはいつかは大人にならなくてはならないのだよ。 
…それから、紗耶がいつか愛する人に巡り会うために、ここから自分の脚で踏み出さなくてはならないんだ。
そのためには話すこと。
紗耶の気持ちをいろんなひとに伝えることはとても大切なんだ』

紗耶は困ったように父を見上げた。

『…どうしても?』

政彦はにっこりと頷き、紗耶の髪に慈しみのキスを落とした。

『お父様はね、大切な紗耶が、どんなに可愛らしくて優しくてステキな女の子なのかということを、世界中のひとたちに知ってもらいたいんだよ。
…それから、世界には美しいことや楽しいことや素晴らしいことがたくさんたくさんあることを、紗耶に知ってもらいたいんだ』

そう言って、紗耶を優しく抱きしめた。

『…お父様の愛する紗耶が幸せになってくれますように…』



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