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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…私みたいな娘がいたら、お父様のお立場がないわ。
私のせいで、みんなに迷惑をかける。
そんなの、嫌。
だから私を、お言葉通りに勘当してください…!」
重い沈黙が、二人の間に横たわる。
サンルームの窓の外、さらさらと降り積もる雪の音だけが、微かに伝わる。
途方もなく長い時間が過ぎたような気がした。
…やがて、深い深い政彦のため息が聞こえた。
「…どうしても、彼を諦められないのだね…?」
「はい…」
…再びの、政彦のため息。
「…紗耶はおとなしやかに見えて、いざというときには頑固だな。
誰に似たのかな…」
困り果てたような言葉…。
そこには、以前と寸分違わぬ父の愛の音色が滲んでいた。
「紗耶、頭を上げなさい」
恐る恐る頭を上げたその先には、いつもと変わらない政彦の穏やかな表情があった。
「…お前の気持ちを変えることは、どうやら無理なようだね…」
「…お父様…」
政彦が真摯な眼差しで、紗耶の手を握りしめた。
「私はお前の恋を許した訳ではない。
…けれど、止めても無理なら…条件を出そう。
私が出した条件を飲むならば、そののちは紗耶の意思を尊重しよう」
紗耶は頷いた。
これ以上、父を苦しめたくなかったのだ。
「…大学は卒業すること。
それから、この家を出たら柿の木坂のお祖父様の家に住み、そこから大学に通うこと」
…お父様は、やっぱり私に甘いのだわ…。
優しい優しい私のお父様…。
私はこんなにも私を愛してくれるお父様に、どうやって恩返しをすれば良いのだろう…。
紗耶は泣き笑いの表情を浮かべた。
紗耶は口唇を引き結び、政彦の貌を見上げた。
「…分かったわ。お父様。
大学はちゃんと卒業します。お約束します。
…けれど、柿の木坂のお祖父ちゃまたちのおうちには行きません」
私のせいで、みんなに迷惑をかける。
そんなの、嫌。
だから私を、お言葉通りに勘当してください…!」
重い沈黙が、二人の間に横たわる。
サンルームの窓の外、さらさらと降り積もる雪の音だけが、微かに伝わる。
途方もなく長い時間が過ぎたような気がした。
…やがて、深い深い政彦のため息が聞こえた。
「…どうしても、彼を諦められないのだね…?」
「はい…」
…再びの、政彦のため息。
「…紗耶はおとなしやかに見えて、いざというときには頑固だな。
誰に似たのかな…」
困り果てたような言葉…。
そこには、以前と寸分違わぬ父の愛の音色が滲んでいた。
「紗耶、頭を上げなさい」
恐る恐る頭を上げたその先には、いつもと変わらない政彦の穏やかな表情があった。
「…お前の気持ちを変えることは、どうやら無理なようだね…」
「…お父様…」
政彦が真摯な眼差しで、紗耶の手を握りしめた。
「私はお前の恋を許した訳ではない。
…けれど、止めても無理なら…条件を出そう。
私が出した条件を飲むならば、そののちは紗耶の意思を尊重しよう」
紗耶は頷いた。
これ以上、父を苦しめたくなかったのだ。
「…大学は卒業すること。
それから、この家を出たら柿の木坂のお祖父様の家に住み、そこから大学に通うこと」
…お父様は、やっぱり私に甘いのだわ…。
優しい優しい私のお父様…。
私はこんなにも私を愛してくれるお父様に、どうやって恩返しをすれば良いのだろう…。
紗耶は泣き笑いの表情を浮かべた。
紗耶は口唇を引き結び、政彦の貌を見上げた。
「…分かったわ。お父様。
大学はちゃんと卒業します。お約束します。
…けれど、柿の木坂のお祖父ちゃまたちのおうちには行きません」

