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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

ぽつりぽつりと、紫織が語り出す。
「…私と先生の間には、そんなにたくさんの想い出はないの。
半年にも満たない恋だったから…」
…けれど…
どこか甘い蜜のような吐息を、紫織は漏らした。
窓越しの冬の透明な夕陽が、紫織を静かに照らす。
…陽に透けたその美しい髪は亜麻色に輝き、透き通るような白い肌とともに、息を飲むような神聖で侵し難い雰囲気に満ちていた。
…お母様…綺麗だな…。
「あの頃の私には、藤木先生がすべてだった…。
毎日毎日、彼に恋をしていた。
会えない日も、一日中彼のことを考えていた…。
藤木先生が見つめる私以外のものにすべて嫉妬して…。
先生を独占したくて…随分我儘も言ったわ」
…懐かしい…。
柔らかな微笑みは、過ぎ去った恋の忘れ形見だ。
「…けれど、先生は私を置き去りにしたわ」
紫織の美しい横貌が、不意に頼りなげな少女の面影を纏う。
「…お母様…」
胸が苦しくなる。
…紗耶も同じ想いを味わったばかりだ…。
「…理由は…今思うと納得できるの…。
先生のお母様のこと…。
何より、きっと私の将来を考えてくれたから…。
…けれど、あの頃の私には理解できなかった…。
見捨てられ、捨てられたと…ずっと苦しかったわ」
「…お母様…」
…不思議だ…。
紗耶は思った。
私とお母様は同じ想いを共有している。
けれど、嫉妬の感情は湧かなかった。
…今、紗耶の胸にあるのは、あの頃の紫織への愛おしさだ…。
そして…
藤木への、変わらぬ恋しい想いだ。
「…お母様…」
「…私と先生の間には、そんなにたくさんの想い出はないの。
半年にも満たない恋だったから…」
…けれど…
どこか甘い蜜のような吐息を、紫織は漏らした。
窓越しの冬の透明な夕陽が、紫織を静かに照らす。
…陽に透けたその美しい髪は亜麻色に輝き、透き通るような白い肌とともに、息を飲むような神聖で侵し難い雰囲気に満ちていた。
…お母様…綺麗だな…。
「あの頃の私には、藤木先生がすべてだった…。
毎日毎日、彼に恋をしていた。
会えない日も、一日中彼のことを考えていた…。
藤木先生が見つめる私以外のものにすべて嫉妬して…。
先生を独占したくて…随分我儘も言ったわ」
…懐かしい…。
柔らかな微笑みは、過ぎ去った恋の忘れ形見だ。
「…けれど、先生は私を置き去りにしたわ」
紫織の美しい横貌が、不意に頼りなげな少女の面影を纏う。
「…お母様…」
胸が苦しくなる。
…紗耶も同じ想いを味わったばかりだ…。
「…理由は…今思うと納得できるの…。
先生のお母様のこと…。
何より、きっと私の将来を考えてくれたから…。
…けれど、あの頃の私には理解できなかった…。
見捨てられ、捨てられたと…ずっと苦しかったわ」
「…お母様…」
…不思議だ…。
紗耶は思った。
私とお母様は同じ想いを共有している。
けれど、嫉妬の感情は湧かなかった。
…今、紗耶の胸にあるのは、あの頃の紫織への愛おしさだ…。
そして…
藤木への、変わらぬ恋しい想いだ。
「…お母様…」

